現代デジタル社会への影響力はアインシュタイン以上

私が中学生だった頃、数学の先生が1と0だけで数を表現する2進法を教えてくれた。この1と0を電流が流れている状態、または切れた状態に対応させると、すべての数を電流のオンオフの組み合わせで表せるという。これを利用したのがコンピュータだと聞いて、私はいたく感動した。

ジミー・ソニ、ロブ・グッドマン『クロード・シャノン 情報時代を発明した男』(筑摩書房)

その考え方を世界で初めて提示したのが、本書の主人公シャノンである。現代社会に不可欠のパソコン、携帯電話、DVDのすべてが、彼なしにはありえなかった。

2進法の最小単位はビットと呼ばれ、文字や画像などの情報はビットの組み合わせで表現できる。情報量の単位としてビットを初めて導入したのがシャノンで、現代のデジタルコンピュータはビットを8個集めた8桁分の巨大情報をバイトという単位で扱う。

本書は「情報理論の父」と呼ばれる天才数学者の評伝である。シャノン以前にも情報という概念はあったが、量的に測定が可能で、瞬時にかつ誤りなく伝達できるようにしたのは彼なのだ。

シャノンはフォン・ノイマンやアラン・チューリングとともに、コンピュータの基礎を作った人物に挙げられる。彼らは第二次大戦の前後に情報通信と暗号技術の基本を確立したが、その後の世界は3人の業績の上に改良を加えただけと言っても過言ではない。ちなみにノイマンやチューリングは映画にも取り上げられてきたが、シャノンの事績は本書で読みやすくなった。現代デジタル社会への影響力という点ではアインシュタイン以上という評価も頷けよう。