シャノンの人柄を克明に、かつユーモラスに描いている

本書のもう1つの特徴は、シャノンの人柄を克明に、かつユーモラスに描いている点である。人並み外れた頭脳があるのに決して自慢せず、シャイで謙虚なのだ。しかも遊び心に溢れていて、周囲の人を楽しませる才覚を持っている。何よりも機械いじりとあれこれ工夫するのが大好きで、世俗的な地位や富には無頓着だった。世界的科学者の名声を得た後もMITで一輪車を乗り回し、学生たちとジャグリングを楽しんだ。

シャノンは1985年の京都賞を受賞したが、「貴重な結果はしばしば単純な好奇心から生み出されることを、科学の歴史は教えてくれます」(366ページ)とスピーチした。機械いじりが大好きだった平凡な少年が「ただ好きでやっていた」ことが、世界を変革するアイデアに結びついたからだ。子どもの才能が将来どう開花するか、また国際ビジネスを動かす次のGAFAが今後いかに誕生するかを考えるうえで、本書のエピソードは大変示唆に富む。

最近は情報に関する研修が盛んだが、100時間受講するより本書のような優れた評伝から学ぶことのほうが多いのではないか。情報時代の本質とその未来を考えるための良書としてお勧めしたい。

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