中国の最高指導者としては14年ぶりの訪朝
中国の習近平(シー・チンピン)国家主席が6月20日、北朝鮮を訪問して金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と会談した。習氏の訪朝は就任以来、初めてだ。中国の最高指導者としては14年ぶりとなる。
なぜ、習近平氏は北朝鮮まで足を運んだのか。金正恩氏はなぜ、習氏を歓迎したのか。それぞれに思惑があるのは間違いない。自国の利益を最優先するが外交である以上、外交にはその国の権力者の思惑が付いて回る。
習氏と金氏の思惑について語る前に、訴えたい。
金正恩氏はしたたかさの域を越え、国際社会に背く「無法者」になりつつある。5月4日と9日には、制裁を続けるアメリカなど国際社会に対しミサイル発射で脅しをかけた。今回の習近平氏の訪朝は、そんな金氏の無法な行動をさらにエスカレートさせる危険性がある。
世界第2位の経済大国と言われ、軍事能力も強化してアメリカや国際社会から恐れられつつある中国の最高指導者を呼び付けたわけだから、金氏の鼻はますます高くなる。
香港と台湾を手にして、毛沢東と鄧小平に肩を並べたい
反対に訪朝した習氏は、金氏に足もとを見られることになった。習氏は訪朝などせずにこれまで通り、金氏に訪中を求めるべきだった。
中国にとって北朝鮮はよほど魅力的なのだろう。習氏は金氏のような“完全無敵”な指導者を目指しているのかもしれない。
中国では現在の国家を樹立した毛沢東(マオ・ツォト)氏と、中国に経済発展をもたらした鄧小平(トン・シャオピン)氏とが特別な指導者としてあがめられている。しかも鄧氏は、香港(旧イギリス領)とマカオ(旧ポルトガル領)の返還を実現させた。
この2人に次ぐ権力を持つといわれるのが、習近平氏である。しかし習氏には中国国民の圧倒的な支持を受けるような実績がない。そんな習氏の野望は、毛沢東氏と鄧小平氏の2人と肩を並べることのできる実績を作り上げることだという。
その実績作りとは何か。一つは中国を経済的も軍事的にもアメリカを越える強国に成長させることだ。二つ目は民主派市民によるデモの続く香港を中国国家に完璧に組み入れることであり、さらには台湾をも統一することである。
習近平氏は、そのために北朝鮮の金正恩氏を使ってアメリカや国際社会に対抗していこうと考えているのだ。