なぜ香港で過去最大のデモが起きているのか

さすがの中国も思い知ったことだろう。

一党独裁国家には、民主化を求める市民の声は理解できない。しかし、国際社会の目が厳しくなったいま、30年前の天安門事件のような武力制圧はもはやできない。しかも騒動は中国経済の要となる香港で起きている。

中国は香港を世界に開かれた金融と貿易の中継地として利用してきた。対応次第で中国は大きなダメージを負う。今後、中国政府がどう動くか。日本をはじめとする世界各国が注目する。

6月16日、香港・香港島で、逃亡犯条例改正案の完全撤回と林鄭月娥行政長官の辞任を求めてデモ行進する人々(写真=時事通信フォト)

香港人の4人に1人が参加するほどの盛り上がり

これまでの報道によると、香港では中国本土への容疑者の引き渡しを可能とする「逃亡犯条例改正案」を巡って抗議活動が相次ぎ、6月9日には主催者発表で100万人を超す大きなデモが起きた。一部の学生がゴーグルとマスクで身を固め、幹線道路を占拠して車の通行を妨害。警備中の警察官ともみ合いになった。これに対し、香港警察は催涙弾やゴム弾を使い、学生側に多くのけが人が出た。

このため香港政府は15日、条例の改正案の審議について期限を定めず延期する、と発表した。しかし民主化を求める学生や市民は「あくまでも改正案の撤回を求める」と翌16日、デモを呼びかけた。デモは、中心部の幹線道路を埋め尽くすほどの大勢の人々が参加し、17日朝まで続いた。デモの参加者は主催者発表で200万人。香港の人口は750万人というから、16日から17日にかけて香港人の4人に1人が参加した計算になる。

香港は集会とデモで民主化を求めてきた

1997年にイギリスから中国に返還された香港は、香港基本法によって外交と防衛を除いた分野で高度な自治が保障されている。中国とは違う独自の行政、立法、司法の三権が認められ、50年という期間で資本主義制度が維持される。

これが「一国二制度」と呼ばれるもので、中国本土に比べて言論の自由もある程度まで保障されている。しかし、議会にあたる立法会は親中派が多数を占める構造で、民主派の声は届かない。

このため、大規模な抗議デモが繰り返されてきた。2003年に香港政府が民主派を取り締まるための国家安全法を制定しようとしたときには、50万人規模のデモが行われ、制定は断念された。