エレベーターを付けたことを「大きなミス」
6月28日から2日間にわたって大阪で開かれた主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)。28日の夕食会で、議長の安倍晋三首相が、大阪城にエレベーターを付けたことを「大きなミス」と発言したことが波紋を広げている。
今回は安倍首相の“大阪城エレベーター発言”から話を始めよう。
安倍首相は、夕食会のあいさつの冒頭で、会場の「大阪迎賓館」(大阪市中央区)からよく見える大阪城の歴史を説明した。
「150年前の明治維新の混乱で、大阪城の大半は焼失しましたが、天守閣は今から約90年前に、16世紀のものが忠実に復元されました」
問題の発言はこの後だった。
「しかし、ひとつだけ、大きなミスを犯してしまいました。エレベーターまで付けてしまいました」
なぜ、こんな発言をしてしまうのか。
普通の人たちの生活の実態がわからない
安倍首相は「もっと忠実に再現すべきだった」とユーモア感覚で指摘したつもりだったのだろう。だが、「大きなミス」という言葉は不適切だ。近くに車いすやベビーカーを使う人がいれば、こうした言葉が出てくることはないだろう。普通の人たちの生活の実態がわからないから、こうした発言が飛び出すのだと思う。つまり安倍首相には社会常識がないのである。
おそらくあいさつの原案を作ったのは首相官邸の役人で、問題の部分は後から安倍首相自身が入れたのだろう。霞が関の官庁から引き抜いた、忖度のできる役人が“エレベーター発言”のようなドジを踏むはずはない。安倍首相自身から率直な反省の弁が聞きたい。
「『ミス』というセンスと感覚が理解できない」
どんな批判の声が上がっているのか。
立憲民主党の枝野幸男代表は6月30日の街頭演説で「江戸時代に作られた建造物に、現代の技術で何かを追加するのはどうかという議論はあるかもしれない」と前置きしたうえで、「大阪城は昭和に作られた。『誰でも利用できるように』とエレベーターがあるのが当たり前だ。『ミスだった』というセンスと感覚が全く理解できない」と訴えた。
国民民主党の玉木雄一郎代表は30日、福島市で記者団に対し「障害者も健常者もともに生きていける共生社会を作っていくことが世界で求められている。G20という大きな国際舞台で、総理大臣が発言する内容としては不適切で、配慮を欠いている」と断罪した。
野党からこうして揚げ足をとられるのは仕方ないだろう。