安倍首相よりもツイッターのほうが役に立つ

トランプ氏と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との電撃的会談で、安倍首相の存在感はさらに薄くなった。

トランプ氏は6月30日午後、韓国と北朝鮮の軍事境界線の真上に位置する共同警備区域の板門店(パンムンジョム)で、金正恩氏と対面して握手を交わした。しかもトランプ氏はその後、軍事境界線を越えて北朝鮮側に入った。アメリカの現職の大統領が北朝鮮側に入るのは初めてだ。2人の会談は昨年6月にシンガポールで、今年2月にベトナムで開かれた会談に続いて3回目となった。

NHKのライブ映像を見ていたが、トランプ氏と金正恩氏との対面のそばには笑顔の韓国大統領の文在寅氏の姿があった。文氏は調整役を買って出たのだ。

安倍首相は金正恩氏との会談を希望している。だが、金正恩氏は「うん」と言わない。トランプ氏にとってはそんな安倍首相よりも、文氏のほうが、利用価値が高いのである。安倍首相は文氏に出し抜かれた格好だ。

トランプ氏は29日にツイッターを通じて「会いたい」と金正恩氏に呼びかけた。金正恩氏はこれを見ていた。トランプ氏との対面時に「ツイッターに驚いた」と記者団に明かしていた。

まさにツイッター外交、ツイッター政治だが、トランプ氏にとって日本の安倍首相よりも、ツイッターのほうが役に立つのである。

金正恩氏には制裁解除へと持ち込む絶好のチャンス

「米朝首脳会談 『非核化』はどこへ行った」(見出し)と訴えるのが7月1日付の産経新聞の社説(主張)である。

産経社説は「米国と北朝鮮との緊張緩和ばかりが強調され、東アジアの平和にとって最大の懸案である非核化が置き去りにされないか強い不安を覚える」と書き出し、こう指摘する。

「2人の良好な関係をアピールするには格好の舞台となった。トランプ氏は『歴史的な瞬間』、金氏は『平和の握手だ』と語った」
「だが、米朝交渉の目指すところは北朝鮮の完全な非核化であり、この点で実質的な進展があったのか、極めて心もとない」

産経社説の指摘は正しい。北朝鮮の非核化が実現されないと意味がないのである。今回の会談は、トランプ氏にとっては大統領選挙を戦う好材料となり、金正恩氏には制裁解除へと持ち込む絶好のチャンスである。