「衆参同日選」のもくろみが外れた安倍首相
参院選が7月4日に公示された。立候補を届け出たのは、選挙区選215人、比例選155人の計370人(改選定数計124人)だ。21日の日曜日の投開票に向け、これまでの安倍政権の政治が大きく問われる。年金をめぐる老後不安や消費税の増税、憲法改正などが争点になる。
一方、そうした論戦は投票の判断だけでなく、「民主主義(デモクラシー)とは何か」を考えるきっかけにもなる。今回の参院選公示をみていると、その思いは強くなる。
6月8日付けの記事では、「選挙に勝つため国益を弄ぶ安倍首相の見識」という見出しでこう指摘した。
「安倍首相は、史上初の日朝首脳会談を実現して拉致被害者を帰国させた小泉純一郎・元首相のように、自ら北朝鮮外交の大きな檜舞台を作り上げ、その勢いに乗って衆参同日選に打って出ようと考えていた」
しかし、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長に相手にされなかった。
すべては憲法改正を実現するための手段にすぎない
「まるで日本政府がわが国に対する協議の方針を変えたかのように宣伝し、しつこく平壌(ピョンヤン)への門をたたいているが、われわれへの敵視政策は何も変わっていない」
「前提条件のない首脳会談の開催などとぬかす安倍一味はツラの皮がクマの足の裏のように厚い」
無条件で日朝首脳会談に臨む決意を示した安倍首相に対し、北朝鮮はこう辛辣な声明を出して拒絶した。厚顔無恥と言いたいのだろう。安倍首相の顔をクマの足の裏に例えるところなど、実に野卑な北朝鮮らしい。
安倍首相の日朝首脳会談開催の思惑は、選挙で勝つことにあった。
日朝首脳会談だけではない。日米貿易交渉の妥結を参院選後までずらしたのも、大阪で開かれた主要20カ国・地域(G20)首脳会議(大阪サミット)で各国首脳との親密ぶりを演出したのも、7月1日に韓国向けの輸出を制限すると発表したのも、みな選挙のためだろう。
安倍首相は選挙で自民党が多くの票を獲得してさらに基盤を安定させ、その基盤の上で悲願である憲法改正を実現したいのだ。そのための手段として外交を使ったのである。