自らの野望を実現するために初の訪朝を果たした
習氏は6月20日から2日間の日程で、北朝鮮を訪問した。
日本の報道によると、平壌(ピョンヤン)空港には北朝鮮が歓迎式典を開いた。同空港では、習氏と彭麗媛(ポン・リーユアン)夫人を、金正恩氏と李雪主(リ・ソルジュ)夫人が出迎えた。両首脳は両手で握手を交わした。
このあと、習氏と金氏はオープンカーで首都平壌市内を移動。沿道では大勢の市民が笑顔で両国の国旗を振る様子が、中国中央テレビ(中国国営)に映し出され、同テレビ局は沿道の市民が25万人を超えたと報じた。北朝鮮はその強力な支配力を使ってこれだけの人々を集めたのだろう。
午後の首脳会談で習氏は朝鮮半島情勢について北朝鮮のこれまでの取り組みを評価し、「北朝鮮が自らの安全や発展についての懸念を解消するためにできるかぎりの支援をしたい」と応じた。
習氏としては、6月末に大阪で開催されるG20サミットを前に北朝鮮を訪問して金氏と会談することで、貿易問題をめぐって対立するアメリカのトランプ大統領に対し、北朝鮮への影響力を示しておく狙いがあった。
これが大方の見方であり、分析である。表面的にはその通りなのだが、前述したように習近平氏は自らの野望を実現するために初の訪朝を果たしたのである。
中国と連携して、トランプ大統領にプレッシャー
一方、金氏は「朝鮮半島情勢の緊張を避けるため、積極的な措置をとってきたが関係国から前向きな回答が得られていない」と語り、アメリカに対する不満を表明した。さらに「我々は忍耐を維持する」と述べ、非核化などをめぐる問題の協議を続ける意向を示し、「関係各国には我々と歩み寄り、朝鮮半島問題における対話のプロセスを推し進め、成果を得ることを望む」と話して習氏に北朝鮮に対する理解を求めた。
北朝鮮としては、ベトナム・ハノイでの2回目の米朝首脳会談が物別れに終わった以上、後ろ盾の中国との連携をより強固なものにして米朝の協議を自国に有利なように進める狙いがある。