広島県の福山市役所が民間企業の社員を副業で受け入れるという全国初の取り組みが始まってから、1年がたつ。応募者395人の中から選ばれた5人のうち2人は東京から広島に毎月通っている。なぜそこまでして副業をやりたいのか。本人たちに聞いた――。

追い風の副業、未経験者のうち「今後、副業したい」人は41.0%

副業・兼業に対する関心が高まっている。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/GA161076)

パーソル総合研究所が2018年10月末時点で実施した「副業の実態・意識調査」(2019年2月12日公表)によると、正社員で「現在、副業している」人は10.9%、「過去に副業経験あり」の人を含めると20.8%。副業未経験者のうち、今後、副業したい人は41.0%に上る。

これを後押ししているのが政府の呼びかけだ。

2018年1月、副業禁止を規定した厚生労働省の「モデル就業規則」を改定し、「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」とし、副業容認を打ち出した。さらに副業・兼業のツールとなるガイドラインを出し、2018年を「副業元年」と位置づけ、普及を呼びかけてきた。

政府の狙いは、経済の活性化にある。

優秀な人材が持つ技能を他社でも活用することで新事業の創出などにつながり、人材を分け合うことで人材確保にも寄与する。また、個人も副業することで自社にはないスキルを獲得し、キャリアアップや収入増につながり、副業をきっかけに起業する人が増えることも期待されている。

副業の1週間の平均勤務時間は10時間、平均月収は6.8万円

実際にパーソル総研の調査では「現在副業している」人の41.3%が1年以内に副業を開始しており、政府による副業普及呼びかけの影響が見て取れる。また、副業者の1週間あたりの副業の平均時間は10.32時間。副業による平均月収は6万8200円だ。

副業の目的は男女・世代別ともに「収入補填目的」がトップだが、20代・30代男性では「自己実現目的」が2番目に多く、「スキルアップ・活躍の場の拡大」や「本業の仕事に対する不満解消目的」も比較的多い。

正社員といえども給与の補填として生活費を稼ぎたい人がいる一方、仕事以外の趣味などの活動や将来を見据えたスキルアップ志向が強いことがうかがえる。