スズキ、38年も前から不正検査が始まっていた可能性
大手自動車メーカー・スズキが4月18日、完成車の不正検査問題で国内最多となる202万台のリコール(回収・無償修理)を国土交通省に届け出た。
スズキは昨年8月、出荷前の自動車の排ガスや燃費性能の検査で不正が見つかった。だが、その後の社内調査によってブレーキ検査などで不合格とすべきものを「合格」とする検査結果の改竄や、無資格者による検査の発覚を恐れた組織的隠蔽など、多くの不正が次々に発覚した。
このためスズキは長島・大野・常松法律事務所に調査を依頼。検査員など約300人へのアンケート調査と、経営層を含む320人への聞き取りが実施され、4月12日にその結果が公表されたところだった。
調査報告書によると、四輪車の全数検査では、ブレーキ、ハンドル、速度計、ライトなど約10項目で新たな不正が発覚した。
ブレーキの制動力の検査では複数の検査員が不合格と判定された車両を合格とするチェックシートの改竄も見つかっている。しかも検査員として登用される前の無資格者の単独の完成検査も判明。十分な教育を受けていないのにもかかわらず、検査員の印鑑を借りて検査をしていたという供述もあった。
一部では1981年ごろから不正検査が始まっていた可能性もあるなど、長期にわたる組織的な品質不正があったことを明らかにしている。
なぜ大規模かつ構造的な不正検査が放置されていたのか
こうした大規模かつ構造的な不正検査がなぜ放置されていたのか。
報告書を読むと、その背景には上からの命令に逆らえない風土やセクショナリズムといった大企業病的体質だけではなく、現在、多くの企業が取り組んでいる働き方改革の負の側面も浮かび上がってくる。
自動車の完成検査を担当する「検査課」は工場ごとに設置されている。言うまでもなく人の生命に関わる自動車の安全性や公害の防止の観点から自動車の構造や装置・性能が保安基準適合しているかどうかを検査する重要な部署である。