子どもに自分と同じ職業を勧めるかどうか、意見は分かれるかもしれない。くりぃむしちゅーの上田晋也さんは完全に否定派だが、長女は確実にお笑い芸人である父の影響を受けているという。著書『経験 この10年くらいのこと』(ポプラ文庫)より、一部を紹介する――。
上田 晋也
撮影=有泉伸一郎

小学1年生の長女への「英才教育」

私は、自分の子どもたちに、自分と同じ仕事に就いて欲しいとは、つゆほどどころかプランクトンの涙ほども思わない。特に、長女には面白い要素などまったく求めていないし、真面目にすくすくと育って欲しいと思っている。しかし、職業病というのか、もはや病気というのか――。

娘が小学校1年生の時、学校から帰ってくると、ハイテンションで私に話しかけてきた。

「あのねお父さん、きょう、学校でおもしろいことがあってね」

普通のお父さんなら、とびっきりの笑顔で喋り始めた娘の話を、菩薩のような微笑みで聞いてあげることだろう。しかし、私は自分のセンサーに引っかかったことを口走ってしまった。

「あのね、何か話をする時に『面白いことがあってね』という入り方はやめなさい。『どんだけ面白いことがあったんだろう?』と、聞く人のハードルが上がるから。そういう時は、『今日、学校で不思議なことがあってね』とか『腹が立つことがあってね』という風に、聞いてる人の意識を他に持っていかせるようにしなさい」

と。私は7歳の娘になんのアドバイスをしてるんだろう――。娘もきっとポカーンとしてるだろうな――、と思って娘の顔を見やると、娘は「なるほど、わかりました、はい!」と真剣な表情で、しかも私に対して初めて敬語で返答した。

いかん、いかん、芸人を育てるつもりなどないのだから、こんなことは教える必要も、インプットさせる必要もないんだ、と反省したつもりだったのだが、その後も、娘が学校のクラスアンケートで、面白い女子1位に選ばれた、と聞くと「よし、良くやった!」と、星野監督ばりに抱きしめて褒め讃えたり、娘が変顔をしたり、面白い動きをした時に限って、「もう一回それやって」とアンコールをお願いし、その都度ビデオカメラを回して記録する、という行動を繰り返してしまっていた。