怒りの感情をコントロールすることはできるのか。くりぃむしちゅーの上田晋也さんは「笑いの邪魔になる」と怒りの感情を持ち込まないようにしているが、10年前に一度、つい怒ってしまったことがあるという。著書『経験 この10年くらいのこと』(ポプラ文庫)より、一部を紹介する――。
体はホットに、頭はクールに
怒りは笑いの最大の敵である。お笑いの仕事をやっていて、自分が腹を立てたり、怒ったりしたことを、エピソードとして話す分には面白いのだが、怒りの感情を持ったまま本番に入ると、笑いの邪魔にしかならない。体はホットに、頭はクールに、飲料の自動販売機のようにうまく分担させておくことが肝要である。
しかし、20代の若い頃は、本番前に腹の立つことや、イライラすることなどがあると、その気持ちを引きずったまま、体はホット、頭はホッテストな状態で本番に入り、表情が険しかったり、突っ込みがいつもよりキツ目だったりすることがあり、笑えない結果になることが、一度や二度ではなかった。
いや、正直に言うと、30代の頃も何度かあった。そんな痛い経験を踏まえ、本番前に嫌なことや腹の立つことがあると、心の中で(怒りは笑いの最大の敵)と自分に言い聞かせ、気持ちを切り替えて、怒りの感情を持ち込まずに本番に臨めるようになった。
自分で言うのもなんだが、とはいえ、誰もそんな私の心の中での葛藤など知る由もないから、自分で言うしかないので言うが、この10年くらいで私が一番成長したな、と思えるのはじつはこの部分である。
忘れられない10年前のエピソード
2016年、ある番組の収録前。
着替えもメイクもすませ、本番前にトイレをすませておこうと思い、用を足してから楽屋に戻ると、有田とその番組の総合演出兼プロデューサー、わかりやすく言えば、その番組で一番偉い人と何やら話をしていたが、私が楽屋に入るなり、有田は私に話しかけてきた。

