「許可なく他社の従業員になることを禁じる」は許可を得ればOK
だが、その一方で副業解禁に踏み切る企業はそれほど増えてはいない。経団連の「2018年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果」(2019年1月22日)によると、兼業・副業を容認している企業は21.9%、禁止している企業は78.1%に上る。
ただし、この経団連調査の対象は比較的大企業が多いが、禁止企業でも「現在認めていないが、認める方向で検討」している企業が2.7%、「現在認めていないが、懸念事項が解消すれば、認める方向で検討」と回答した企業が31.9%に上り、比較的柔軟な姿勢を見せている。
また、パーソル総研の企業調査(従業員10人以上)では「全面的に禁止している」企業が50.0%、「全面的に許可している」企業が13.9%、条件付きで許可している「禁止していない」企業が36.1%。条件付きながらも半数の企業が副業を容認している。そのうちここ1年以内に許可に踏み切った企業が22.8%と、中小企業ほど容認姿勢を打ち出す傾向が徐々に強くなっている。
東証一部上場のある食品メーカーも条件緩和を打ち出している企業のひとつだ。就業規則上は「許可なく他社の役員・従業員になることを禁じる」と規定しているが、同社の法務部長はこう語る。
「逆に言えば、許可を得れば可能ということです。実際、たとえば、研究者が大学の要請で客員教授になる、実家のファーストフードフランチャイズ会社の取締役になるといったケースもあります。原則不許可にしている理由は、社員の健康管理、職務専念義務、競業への機密情報漏えいリスクがあるからです。とはいえ、役員・従業員になることを禁じているだけなのでアルバイト程度は可能性があります」
広島県福山市役所の競争率80倍の「副業」に採用された人とは
こうしたなか、民間企業の社員を副業で受け入れるという全国初の取り組みをしている自治体もある。広島県福山市は兼業・副業限定で、転職サイトの「ビズリーチ」上において人材を募集。395人が応募し、選ばれた5人が2018年3月から働いている。
仕事の内容は人口減対策の若者定着や女性の子育て支援に関わる施策の企画・推進。戦略推進マネージャーとして市長に近い立場で民間企業の視点から専門的な助言してもらうという位置づけだ。
同市が募集した動機は、民間企業が懸念する情報漏洩のリスクもなく、兼業・副業であれば首都圏の優秀な人材に来てもらえるのではというのが動機だ。