東日本大震災で甚大な津波被害を受けた宮城県七ヶ浜町。昨年、この地域にできた海沿いのリゾート施設が人気を集めています。ホテルやレストランなどの施設は、すべて堤防の外。まちづくりの専門家である木下斉氏は「『子どもたちに海を前向きに捉えられる場をつくりたい』という関係者の思いが、常識を打ち破った」と評価します。その挑戦の中身とは――。
地元海産物の産直販売所「うみの駅 七のや」

災害が頻発する昨今の日本ですが、とりわけ東日本大震災の大きさは今も多くの方の記憶に残っているものと思います。被災地復興では様々な形で予算が投入されましたが、継続的な成長を果たすものは多くはありません。その中でも被災地というハンディキャップを抱えながらも、しっかりと事業と向き合い、成果を生み出している事例が存在しています。これが宮城県七ヶ浜町での事業開発プロデュース、運営を受託するワンテーブルです。

※初出時、シチノリゾートの住所が間違っていました。正しくは宮城県七ヶ浜町です。訂正します。(10月31日19時40分追記)

何もない被災地に生まれた大人気産直施設

ワンテーブルのスタートは地元海産物の産直販売所「うみの駅 七のや」の開発でした。津波被害を受けた地域は、復興とは程遠い何もない状況。しかし、被災復興のためには「地元のものが売れなければ生計を立てられない」という漁師たちの声がありました。そこで地元海産物がそろう販売所と海鮮丼などのレストラン、さらに販売所で買ったものを焼いて食べられる炉端焼きスペースを組み合わせて開業したのが同店です。

特段人通りが多いわけではないこの立地を強みに変えるため、マーケティング面でも工夫があります。すぐ目と鼻の先である松島は牡蠣の養殖でも有名な地域です。その対岸に位置する七ヶ浜を「うら松島」と銘打って、インターネットでの検索対応を積極的に行うことで、少しでも多くの人が七ヶ浜に接触するように機会を増やしています。