何もなかった七のやの周囲にも住宅が再建され、少しずつ街の様相を取り戻してきています。七のやも豊富な品ぞろえと産直ならではの値付け、「これでもか」という程のボリュームがヒットし、週末には行列ができるほどの人気店となっていきます。

自治体が開発する道の駅などの公共施設は鉄筋コンクリート構造の立派な施設が多いのですが、七のやは簡易な建て方。無駄のないレストラン、産直販売、炉端焼きの3つのスペースを組み合わせたフロア設計は、民間企業が経営する施設ならではとも言えます。

(左)豊富な品ぞろえの七のや、(右)ボリューム満点の海鮮丼

堤防の外にできた“常識破り”の「シチノリゾート」

産直施設に続き、彼らは次なる事業に乗り出しました。

東日本大震災では多くの地域が津波被害を受けたため、堤防開発が各地で進められています。七ヶ浜も例外ではありませんでした。堤防開発が進む中、彼らは思いもよらぬ事業を立ち上げます。堤防の外側にホテルやレストランを開発する「シチノリゾート」構想です。

当然ですが、堤防の外での居住や宿泊には厳しい制約が課されます。堤防の外にホテルなどを作るという奇想天外な構想はとてもハードルの高いものでしたが、ワンテーブルは情熱と論理を持って規制を1つ1つクリアしていきました。堤防より高い位置に客室を用意し、屋上に避難デッキを作るなど安全性をしっかり確保することで、見事リゾート施設の建設と開業の許可を得ることができました。

(左)シチノリゾートの外観、(右)ホテルの屋上には避難デッキが設置されている

2017年12月に開業したシチノリゾートは、遠く松島を望めるカフェレストランと、10室の客室を持つホテル、そして船などのアクティビティを組み合わせた業態となっています。各部屋にはキッチンが付いているので、産直施設「七のや」から地元の海産物などの食材を買ってきて、部屋で料理することもできるなど、連泊でも飽きのこないよう工夫をしています。

キッチン付きの客室

カフェレストランは松島を望む景観と落ち着いた店内が好評で、オリジナルのスフレパンケーキなどが人気となっています。広く地域の人にも開放することを意識しており、午後3時以降はお手頃な価格設定のセットを提供。地元の中高生が放課後に来られるようにもしています。