幸せな人生を手に入れるには、なにが必要なのか。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏は、「若さやモテ、出世など、いろいろなことを諦めるたびに人生がラクになった」と語る。今回、取り上げるのは「筋トレ」。中川氏はリフティング大会で入賞するほど筋肉を鍛えていたが、35歳のときにトレーニングを辞めてしまった。その理由とは――。

十代のころ、筋トレにハマる

ここ数年でいろいろなことを諦めた結果、人生がラクになった──といった話は、これまでも当連載で何度か書いてきた。具体的には「出世」「モテ」「若くあり続けること」を諦めたわけだが、さらに諦めたことがある。それは「筋トレ」である。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Zinco79)

筋トレは50代だろうが60代だろうが取り組めることであり、筋肉は鍛え方次第で、その年代なりに増やすことが可能だ。テレビ番組で筋骨隆々としたおじいちゃんが紹介され、スタジオの出演者が「オーッ」などと驚くシーンを見たことがある人もいるだろう。

私が筋トレを始めたのは17歳のころ。当時はアメリカの高校に通っていたのだが、一般的な体育の授業のなかに、トレーニングマシンなどを用いた筋トレが組み込まれていたのだ。試しに続けてみたところ、自分の筋肉がみるみる増えていく様を目の当たりにして、がぜん楽しくなってしまった。

ある日「もうこれでいいか」と諦観をおぼえる

大学入学後も、筋トレの習慣は維持されることになる。体育会の学生が使う筋トレ室を体育会非所属ながら利用し、主に上半身を鍛えていた。4年生の秋には「せっかく鍛えたのだから、何か結果を残したい」とさまざまな大学の体育会が出場する「関東学生パワーリフティング選手権大会」にエントリー。60kg級に出場し、ベンチプレスの部で5位に入ることができた。

就職後は忙しくなり、なかなか鍛える時間が確保できなかったものの、東京・田町の勤め先から徒歩で行くことができた森永製菓のトレーニング施設に週2回は行くようにし、土日はどちらか1日、母校である大学の筋トレ室でトレーニングをしていた。そして32歳で一戸建ての二階屋に引っ越した際、スペースが空いていたこともあって、ついにベンチプレスを自宅に導入してしまった。

あれから13年、このベンチプレスは気が向いたときやイライラしたときに上げる程度である。イライラしているとき、身体に思いきり負荷をかけるとササクレ立った気分が解消される。いまでは身体のためというより、精神の安定のために筋トレをやっているようなものだ。

35歳のとき、熱心に鍛えることを辞めた。それまでの18年間でついた胸と上腕の筋肉はベースとして残り続けていくだろうし「もうこれでいいか」と考えるようになったからだ。現状維持に気を配りながら、さらに上を目指すような筋トレは、そこで諦めた。それから10年がたち、いまではすっかり筋トレへの未練も消えてしまっている。