人はそれぞれ価値観が異なる。価値観が合わない相手と付き合うのは、お互いにマイナスだ。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏は「『行列に並びますか?』と聞けば、自分と合うかどうかは大体わかる。行列に並ぶ人と並ばない人が仲良くなるのは非常に難しい」と指摘する――。
2018年10月13日、豊洲新市場の一般公開が始まり、すしなどの飲食店に並ぶ見学者ら(写真=時事通信フォト)

豊洲市場の人混みにウンザリ

相手が自分と合うタイプの人物かどうかを判断できる、手っ取り早い質問がある。それは「行列に並ぶことを厭わないか、それとも行列が大嫌いか」という問いだ。これをぶつけてみて、相手が自分とは真逆の答えを返すようだったら、深い関係にはならないほうが吉だろう。

2018年10月13日、東京・豊洲市場が一般向けにオープンした。この日の豊洲市場には、4万人の来場者が訪れた。これはUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)の1日の来場者に匹敵する人数だという。行列嫌いな私からすれば、映像を見るだけでうんざりするほどの人混みだった。

築地に立地していたころから市場やその周辺はすでに観光地化していたとはいえ、ここまでの来場者は見られなかった。新しい商業施設やテーマパークが開業したとき、「初日に行きたい!」と勇んで出かけていく情報感度の高い人々が出現するものだが、豊洲市場もそうした人々のお眼鏡にかなったということかもしれない。

行列に並ぶ感覚が理解できない

映像では、食事にありつくのに3時間待たされたという人や、市場施設の見学のための列と飲食店に入る列を間違えてしまい、50分並んだ末に行列を並び直す人、あまりの混雑ぶりに入場を諦めて帰る人などが紹介されていた。近隣の駐車場は軒並み満車で、市場から徒歩20分の場所にようやく見つけたという人もいた。

そうした状況を知って、私がまず考えたことは「どうせ、もとは築地にあった飲食店なのだから、すいていたであろう移転の3カ月くらい前に行くか、人出が落ち着いてくると思われる移転の2カ月くらい後に行けよ」ということだ。加えて、強く思ったのは「行列に並ばずとも食べられるウマい店なんて、豊洲市場以外にいくらでもあるだろ?」ということだ。

この段階で、行列を厭わない人の頭のなかには、すでにいくつもの反論と罵倒の言葉が浮かんでいるに違いない。しかしながら、行列が大嫌いな人間からすれば、行列に並ぶことに価値を見出す感覚のほうがまったく理解できないのだ。もちろん、そんな私でも空港や自動車運転免許の更新施設、映画館やスポーツ施設の発券所などでは手続き上必要なので、行列に並ぶ。ただ、それ以外の娯楽や食事で、わざわざ行列に並びたいとは思わない。