行列嫌いの原点はディズニーランド

私がこうした考えを抱くに至った原点は、1983年5月1日にある。この日、行列が好きな祖母の提案により、前月に開業したばかりの東京ディズニーランド(TDL)に一族で出かけたのである。

オープン以来初めてのゴールデンウィークに祖父母、4人のおじ・おばとその一家、そして私の家族と総勢21名もの大所帯で出かけたのだが、前日は松戸のおじの家に全員で泊まって朝イチの出撃に備えるという気合の入れようだった。すべて、ミーハーな祖母が「東京ディズニーランドに息子・娘一家といち早く行きたい!」などと、今の私にとってはクソ以外の何ものでもない提案をしたことが発端なのである。

これだけの人数が一般的なマンションの一室に収まるわけなので、ゆっくり休めるはずもない。食事も適当で、朝食にいたっては1分で食べられるようになるカップ麺の「クイックワン」である。これを腹に流し込み、朝7時ごろにはTDLへ車で向かったのだが、すでに駐車場に入るにも往生するほどの大混雑だった。

価値観が合う相手と、ストレスのない関係を築く

そして開園と同時に目当てのアトラクションまでダッシュをするも、とにかくどこもかしこも大行列。結局、体験できたのは当時の「Eチケット」(要するにいちばん高いアトラクション向け)で入れる「ジャングル・クルーズ」「ホーンテッド・マンション」「カリブの海賊」のみ。いずれも3時間待ちだったのだ。

実際は夜になって「スペースマウンテン」にも並んだのだが、行列の途中で停電トラブルが発生してしまい、この日は丸々1日を費やして3つのアトラクションしか楽しめなかった。記憶に残ったのは、人混みにもまれ、延々と行列に並び、喧噪に気押された末の徒労感だけである。

このように、行列に関する強烈なトラウマ体験を9歳にして味わってしまったせいか、私はすっかり行列が嫌いになってしまったのだが、その後の人生においても、良好な恋人関係や友人関係を築けるかどうかは「行列OK?/行列NG?」という質問をするだけで、かなりの確度で予見できたように思う。

相手と良い関係を構築できるかどうかを測りたければ、付き合いが浅いうちに「行列に並ぶ? それとも並ばない?」と尋ねてみてはどうだろう。それで価値観が合うようなら、思いのほか早く仲良くなれるかもしれない。行列が好きな者どうし、行列が苦手な者どうし、それぞれで仲良くやればよいのだ。

【まとめ】今回の「俺がもっとも言いたいこと」
・自分と価値観が合い、ストレスなく付き合える相手かどうかは「行列に並ぶか、並ばないか?」という質問でかなり見極められる。
・恋人や友人とは、趣味嗜好が合う者どうしで仲良くやればいい。
・誰とでも、話し合い、擦り合わせれば理解し合える――というのは幻想。価値観の相違は、そう簡単には埋められない。
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973年東京都生まれ。ネットニュース編集者/PRプランナー。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライター、「TVブロス」編集者などを経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『バカざんまい』など多数。
(写真=iStock.com/時事通信フォト)
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