筋トレで自己肯定感が高まるのは“麻薬”

加えて、筋トレをしばらくやらない状態でそれまでと同量の食べ物を摂取し続けてしまうと、往々にして腹が出てくる。筋肉量が多いということは、すなわち「燃費の悪い身体」であることを意味している。筋肉がエネルギーを大量消費してくれるので、少しくらい暴飲暴食したくらいでは太らないのだ。

それどころか、鍛え続けることで筋肉量は増加していくので「ウヒヒヒヒ、我がカラダはin good shapeだぞ」なんて自己満足の極地を味わうことができる。そんな経験をしてしまうと、筋肉の量が目に見えて減っていき、それと入れ替わるように脂肪の量が増えていく状況は恐怖でしかない。

筋トレを熱心にやっていたころは、銭湯やプールに行くときでさえ誇らしい気持ちになった。知らない人から「うわー、触っていいですか」なんて言われたときのうれしさといったら。女性芸能人が「筋肉質な男性が好き」なんて言っていたら、「おぉ、もしかしたらオレも○○さんと付き合えるかな」と妄想することもあった。

とにかく“筋肉が多い”というだけで、ありとあらゆることに自信が持てるようになり、自己肯定感が高まるのである。この麻薬のような感覚を一度でも味わってしまうと、筋トレをしないことが大きなストレスとなり、筋量が減ってしまう状態はたまらなく悲しいものになる。しかし、終わりが見えないだけに「オレは一生涯、筋トレを続けなければならないのか?」と、心の弱い部分が訴えかけてくるのだ。

気持ちが楽になった途端、年収が増えた

実は20代のころにも、何度か筋トレを辞めようとしたことがある。会社で忙しいなか、森永製菓のトレーニングセンターに行くのがキツくなってきたのだ。それでも筋トレを続けたのは、意地としか言いようがない。おかげで、激務で不規則な生活を続けてもなんとか体形は維持できた。

30代になり、フリーライターとして猛烈に忙しくなったときも辞めようと思ったが、自宅にベンチプレスを導入することでなんとか続けられた。そしてついに35歳のとき、踏ん切りがついた。仕事がさらに忙しくなっただけでなく、同時期に狭い家へと引っ越したので、ベンチプレスのセッティングが大変になってしまい、ようやく決断することができたのだ。

「いまが辞め時だったのだ」「もう無理にやることはない」──そう決めたところ、途端に気持ちがラクになった。それ以来、純粋に仕事に集中できるようになり、年収は大幅に上がっていった。