食事を改善するだけで、集中力、判断力、記憶力を高め、仕事のパフォーマンスを上げることができる。何をどう食べたらいいのか。糖尿病専門医の牧田善二医師と、脳神経外科医の熊谷賴佳医師に話を聞いた。

1 脳に良い食事、悪い食事

▼理論編

集中できない眠気、だるさの原因は

こんな経験はないだろうか。重要な仕事を抱え、午後からの自分に活をいれるために、昼は丼ものでエネルギーをたっぷりとったのに、眠気やだるさに襲われ全然集中できなかった。ようやく頭がはっきりしてきたと思ったら、今度はイライラして落ち着かず、早くもアフター5のビールが恋しい――。

写真=iStock.com/Nirian

こうした午後の眠気について、AGE牧田クリニックの牧田善二医師(糖尿病専門医)は「眠気やだるさは、昼食に糖質をたっぷりとって急上昇した血糖値が、その反動で急激に降下し、低血糖状態に陥ったために起こっているのです」と解説する。

糖質とは炭水化物の一部のことで、果物などに多く含まれる単糖類と、砂糖などに多く含まれる二糖類、ご飯やパンなどに多く含まれる多糖類などがある。体が糖質を一気に吸収すると、一時的に元気になるが、血糖値の上昇をキャッチした体はすぐに、膵臓からインスリンを放出して血糖値を下げようとする。急激に上がった血糖値は急激に下がっていくために、眠気やだるさが起こるのだ。

「ここで、目を覚まそうと甘い缶コーヒーや清涼飲料水などを飲むと大変です。砂糖水は消化にまったく時間がかからないのであっという間に胃で吸収され、血糖値はとんでもなく上昇します。すると脳では『報酬系』といわれるドーパミンが分泌され、非常に幸せな気分になりますが、その後にまた血糖値の急降下に襲われ、イライラするので糖質が欲しくなるのです」(牧田医師)

これがまさに「糖質中毒」の状態だ。糖を食べてハイになり、糖がなくなると気分が落ち着かず、集中力が欠ける。

牧田医師は「血糖値が下がると脳細胞の働きが悪くなり、思考力、集中力、認知力が下がります。ちょうどいい血糖値の値は70~140mg/dl。血糖値を上げないように食べることが、脳の働きを良くするためには大切」という。

また、糖質のとりすぎは体内でたんぱく質と結びつき、長い時間のうちに、「AGE(糖化最終生成物)」という老化物質をつくりだす一因になる。これを「糖化」といい「酸化」より老化をもたらす。牧田医師は「血糖値の上昇を抑えることはAGEを防ぎ、脳の老化を予防します」という。