高い血糖値は、認知症をひき起こす

血糖値のもたらす脳への影響は、長期的にはどうなのか。脳神経外科医・認知症サポート医の熊谷賴佳医師(京浜病院院長)は、認知症の要因として、糖の代謝異常があるという。

そもそも、糖をとりすぎる生活は、生活習慣病である2型糖尿病の原因だ。高血糖状態が続くことでインスリンの分泌異常が起き、結果的に細胞に糖をとり込めなくなる。まさに脳でも、同じことが起きると熊谷医師はいうのだ。

大脳には、有害な物質をブロックする血液脳関門という脳の関所がある。インスリンはここを通過して脳に入り、脳内では記憶や思考にかかわる役割もしているとされている。ところが、この分泌異常が起こると、どれだけ糖をとっても、脳がそれをエネルギーとして生かせない。この状態を、熊谷医師は「脳内糖尿病」と呼んでいる。

たとえば、認知症によくある「まだ、ごはんを食べていない!」という訴え。今までは、認知機能の低下による物忘れの症状とされてきた。

「しかし、この方の血糖値を測ったところ、食後なのに食べる前より血糖値が低くなっていました。この患者さんは糖尿病ではありません。しかし何らかの理由で、『食後低血糖』の状態が起き、脳が食事から糖のエネルギーをとり込めなくなっていたのです。これが脳細胞を破壊させ、認知機能に異常を引き起こしたと推測しています」

腸内環境も脳に影響する

脳と腸には、神経系などを介して互いに影響を与え合う「脳腸相関」の関係がある。腸内細菌のバランスは、脳内物質ドーパミンの分泌に関わっているし、セロトニンはその9割が腸でつくられる。「過敏性腸症候群」は通勤電車の中で起こりやすい腹痛や下痢で、脳のストレスが原因といわれている。そこで、脳の回転を良くするには腸内環境を整えることも重要だ。

熊谷医師は、「認知症の患者さんには便秘が多く便が臭いなど、腸内環境の悪さを実感することが多い」という。

「認知症の周辺症状といわれる徘徊や無気力でぼんやりした状態、突然興奮して怒りだすなども、便秘を解消することで改善するケースがあります」

それでは、血糖値を上げず、腸にも良い食事とは、具体的にはどんなものなのか。