大手チェーンの店ではなく、もっと通いやすく、そして誇れる地元の店を作ることは、その後の消費行動にも強い影響を与える重要な役割を果たします。地元資本で友達や恋人と遊びに行ける場というのは、まちにとってなくてはならない特別な場所となるでしょう。
七ヶ浜は「事業地として申し分ないポテンシャル」
シチノリゾートの総事業費は4億5000万円です。一見すれば不利な立地にどうしてこのような大きな投資をしたのでしょうか。
復興事業という背景は一部あるとはいえ、他の地域の開発事業は企画や開発をする企業が、開業後も自ら運営に関わることは少ないのです。多くの場合、過剰な開発をしたほうが得をする地域外事業者がとりまとめて企画から開発までを担当し、運営は地元任せになっています。そのため東日本大震災の被災復興のための施設でも、極めて厳しい運営を強いられているところも多々あります。
そう考えるとワンテーブルの挑戦は極めて例外的なわけです。しかも、津波被害があった地域で、堤防の外にリゾートを作るなどはあまりに“常識破り”です。その理由について、ワンテーブルの社長、島田昌幸氏はこう語ります。
「津波で海がネガティブに捉えられるようになってしまいましたが、この地域は戦前から素晴らしい海が評価されていました。そのため日本国内資本のみならず、米国資本でもリゾート開発があったんです。今でも仙台都市圏の中にも位置して、しっかり魅力をつくればお客さんはきてくれる立地。『復興』という目的もありましたが、事業地として申し分ないポテンシャルがあると思ったんです」
車で移動すれば仙台の都市部から日帰りも可能で、都市部にはない自然が残る地域。実際に現地に行くと、サーフショップがあり、サーファーが浜辺から波に乗ろうと出ていく姿も見られるなど、可能性を感じるところにあります。
「また復興のプロセスの中で、今一度子どもたちにも海を前向きに捉えられる場にしたかった。だから観光客のためだけの施設ではなく、地元の人が利用してもらえる産直施設、そしてホテルやレストランを作ったんです」
現在、ワンテーブルの運営する七ヶ浜の七のや、カフェ、ホテルの3店舗で月間4万人の来客があり、月商3600万円を売り上げるまでになりました。