これまで言われてきた「災害への備え」は、一面的だったのかもしれない。料理レシピ投稿・検索サービス「クックパッド」によると、2018年9月6日の北海道胆振東部地震では、レシピの検索動向が「白米の炊き方」から「パンの作り方」に変化するタイミングがあったという。なぜ「白米よりパン」だったのか――。

「停電時に使えるレシピの記事をすぐに上げよう」

2018年9月6日の朝、未明に起きた北海道胆振東部地震のニュースをスマホで見た私は、そのままチャットアプリを開いて「クックパッドニュース」編集部のメンバーへメッセージを送りました。「停電時に使えるレシピの記事をすぐに上げよう」。

「クックパッドニュース」は、月間約5500万人が利用する料理レシピ投稿・検索サービス「クックパッド」が2013年9月から運営しているWebメディアです。主な記事発信は、クックパッド内のレシピを活用した献立の提案です。ただし、「災害時にも役立つレシピ集」というカテゴリも常設しています。

日本は災害大国です。クックパッドニュースでも、事あるごとに非常時の食生活を支えるレシピを記事にして配信してきました。これらをまとめた「災害時にも役立つレシピ集」のカテゴリを活用し、北海道胆振東部地震の被災地に向けて、必要な情報をいち早く提供しようと考えました。

「土鍋でご飯」が地震前日の480倍以上に急増

早速、編集部全員で記事の作成に動き、6日午前中に「【停電時に役立つ】カセットコンロがあればできるご飯の炊き方・パスタの茹で方」、正午には「【停電時の緊急レシピ】常備している缶詰でできる簡単おかず」の2記事を配信しました。これは2016年4月の熊本地震での経験を活かしたものです。

7日には、地震発生後のクックパッドの検索データ分析を進めていた社内の別部門のメンバーからも情報共有がありました。

「昨日、北海道エリアの“ご飯”の検索頻度は、地震発生3日前の36倍以上に増加していました。特に炊飯関連では、地震発生3日前まではほぼなかった“土鍋でご飯”というキーワードが登場し、検索頻度は地震前日の480倍以上に急増しています」

「8日から“パン”の検索頻度が上がってきています」

北海道エリアのレシピ検索頻度は地震発生後に大幅に減少し、発生3日前と比較して一時的に73.0%減となりました。その後、電気・水道などのライフライン復旧に伴って徐々に回復し、約3日で地震発生前の水準に戻っていきます。

地震発生直後に急激に増えた炊飯関連の検索量も、2日後には収束しつつありました。しかし、被災地では引き続き節電が求められており、データ分析を進めていたメンバーからも「土鍋だけでなく、“圧力鍋”などでごはんを炊く方法の検索数が上がってきている」との続報が入りました。節電要請を受けて、被災地域の家庭では加熱が短時間ですむ調理器具を活用して調理をしようとしていることがうかがい知れました。

さらに、「これはまだ調査中ですが」と前置きし、前出のデータ分析担当者が、もう一つの事象について教えてくれたのです。「8日から“パン”の検索頻度が上がってきています」と。