地方の活性化にはなにが必要なのか。高校時代からまちづくりに関わり、35歳にしてキャリア20年の木下斉氏は「まちを変えるのは、小さな市場を掴む個性のある店だ」という。その典型例が北海道・静内の「あま屋」。全国からファンが集まり、自前の「フェス」まで開催するという人気店は、どうやって生まれたのか。現場から報告する――。

なぜ小さなお店や企業のほうが着実に成長するのか

たくさんの専門家が集まり、多額の資金を投じて、巨大な施設開発を行う。全国各地の自治体は、そうした地域再生事業を主導していますが、私はそうした事業で再生した地方を見たことがありません。

むしろ、投資を行ったにもかかわらず、マイナスの影響を与えてしまい、地域をさらなる衰退へと引きずり込んでしまっている事例のほうが目立ちます。

一方で、地方に可能性がないかといえば、そんなことはありません。実はここ数年、小さくとも尖(とが)ったコンセプトの民間発の事業が、少しずつ成長し、地域に大きな影響を与えるようになった事例が、着実に増加しているのです。

なぜ官民あげた巨大計画は頓挫するのに、大して資金力もない小さなお店や企業のほうが地域で着実に成長していくのか。本連載では、そのような地方の小さくともキラリと光るお店や企業などに光をあて、その事例を紹介していきます。

供給を拡大して地域を破壊する巨大計画

地方ではいまだに活性化のための巨大計画が策定されています。それは、大規模な資金を投資して「供給」すれば、さまざまな需要が自動的に吸い寄せられ、地域が再生するはずだ――という都合のいい考え方に基づくものです。

しかしすでに地方においては、住宅も、店舗も、公共施設も余っています。つまり量的な「供給」は既に足りているのです。そのため、単に小さくて古いものを壊し、大きくて新しいものをつくるだけでは、とんでもない失敗となり、地域をさらに衰退させることになります。

岡山県津山市のアルネ津山、青森県青森市のアウガ、山梨県甲府市のココリ、秋田県秋田市のエリアなかいち、北九州市のコムシティなど、大きな予算を使った計画が頓挫し、活性化どころか周辺にマイナス効果をもたらした事例は枚挙にいとまがありません。

「尖った市場」を掴む、地方の小さな店

小さな店、小さな事業よりも、大きな店、大きな事業のほうがいい、というのは、「拡大経済社会」における価値観です。昔のように、皆が同じものを買い求める消費行動が基本の巨大市場が存在する場合には、大きいものが勝ちます。ところが、今はそのような市場はどんどん減少しています。また、そもそも昔からある大きな市場は大企業が大きなシェアを持っており、地方の小資本・少人数で今から参入して勝てることは稀です。

現代においては、価値観が多様化しており、消費行動も同様に個々人で相当に幅があります。その結果、かなり尖った小さな市場が多数存在しています。

だからこそ、今、地方で成果をあげる小さなお店や企業は、強い個性で、小さな市場に適合して成長しています。そして、いつの間にか、その小さな店は地域で無視できない存在感を示すようになり、そのうち地域外からもその店を目的に、そのまちを訪れる人を増やし、結果的に地域全体に変化を与えるようになっているのです。