「中心市街地の活性化」は、地方都市の共通する課題だ。かつての賑わいを取り戻そうと、再開発の誘致が繰り返されている。しかしそれでいいのだろうか。大和総研主任研究員で、地域経済が専門の鈴木文彦氏は「中心地は交通手段の変化で移転する。その事実を受け入れなければ、市街地活性化はうまくいかない」という。集中連載「生き残る街、消え去る街」の第1回は、青森と石巻の事例からヒントを探る――。
青森市は「失敗」で職員給与を削減
青森駅から西に広がる中心市街地の活性化の起爆剤として期待され、2001年に開業した再開発ビル「アウガ」だったが、初年度の店頭売上高が目標の半分に満たない23億円で、その後も業績低迷が続いていた。何度か再建策を講じたが業況は改善せず、いよいよ運営会社を清算することになった。
経営不振の責任をとるかたちで市長は辞任。今年の2月末には1階から4階にあった商業フロアからテナントが一斉に撤退した。アウガ運営会社が特別清算になり、市民に負担をかけたことに対する市の姿勢を示すものとして、この4月から1年にわたって市職員の給与が削減されることになった。
メインストリートの新町通りの休日の歩行者通行量を見てみよう(図表1)。アウガが開業した年こそ、アウガ前の通行量が前年比6割増となったが、以来その年を上回ることはなく2014年には開業前の水準に戻ってしまった。新町通りで最も通行量が多い成田本店前はアウガ前よりも減少ペースが急で、2005年からアウガ前とほとんど差がなくなっている。アウガ開業の翌年からは休日の通行量が平日を下回っている。
中心市街地で最も地価が高い成田本店前の通行量の不振が示すように、新町通りにあったマクドナルドが2010年に閉店。その翌年には中三百貨店が民事再生法の適用を申請した。中心市街地の低迷は、道路に面する土地の価格である路線価の低迷にも現れている。新町通りの路線価は開業時の約3分の1まで落ち込んでいる。
代わりに堅調なのは国道7号線バイパスに沿ってロードサイド店舗が集積する浜田地区だ。大規模ショッピングモールを中心に新しい「中心地」が形成されつつある。