「賑わい」は必要なのか?

それでも県庁所在地はまだマシなほうで、それ以外の中小都市を中心に、中心市街地の顔ともいえる商店街のシャッター街化が目立つ。多少の例外はあるが、全国の地方都市で市街地活性化が苦戦している。どうしてだろうか。活性化のプラン構築にあたって街の特性を的確に把握していなかったのではないか。これが本連載の仮説である。

全国どこでも、かつて賑わっていたころの中心市街地を知る人は「昔は目抜き通りを歩くと、すれ違いざまに肩が触れ合うくらいに行きかう人が多かった」と言う。活性化のプランを構築するのに、かつての商業中心地としての賑わいを取り戻そうとしていないだろうか。

ここでいう街の特性とは何か。連載の前提にある考え方は、第一に都市の人口、いわば街のキャパシティはときの産業構造によって決まること。第二に街のスタイルはその時代の主要交通手段で決まることだ。とくに1990年以降、街のスタイルを大きく変えたのは乗用車の普及で間違いない。

図表2は世帯当たりの乗用車保有台数の推移を示している。都道府県別に見ると、全国で最も普及率が高いのは福井県、真ん中の23番目が香川県で、最下位は東京都だ。国道バイパスに沿って郊外型の店舗が見られるようになったのは1980年ころ。いわゆるロードサイド店舗からなる新たな商業集積である。

図表2を見ると、90年代に大きく伸びていることがわかる。軽乗用車がけん引し、乗用車が一家に1台いきわたるようになった。地方を中心に2台ある家庭も珍しくなくなった。国道バイパス沿いに大規模ショッピングセンターの進出が相次いだのもこのころである。