1. 論理をすり替える
グーグル会長、訪朝の真意は

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絶対的に反論できない「ルール」を掲げる

外交の現場では、一見「論理のすり替え」と取られかねないような手法を用いて、相手を窮地に追い込み、自らの要求を実現させることがある。

米国やヨーロッパでは常套手段といえるものだが、日本人は、まんまとこの手にはめられることが多い。

たとえば最近、米国・グーグル社のエリック・シュミット会長が、いきなり北朝鮮を訪問して話題になったが、あれは「米国は北朝鮮に接近する」という意思表示にほかならない。ひいては、米国の同盟国である日本に対しても「北朝鮮と仲良くしろ」「日朝間にある拉致問題は、とりあえずいいじゃないか」と米国が言い出す可能性があるということだ。

拉致問題について日本に真正面から働きかけても、テコでも動かないことは米国も百も承知。そこで悪知恵を働かせるのだ。ワシントンの日本大使館前では、毎週デモが行われていた。未成年者の奪取に関するハーグ条約を盾に「日本は米国の子供を“拉致”している」というのだ。

かつて米国人男性と日本人女性が米国で結婚し子供ができたものの、何らかの理由で離婚すると、日本人女性は子供を日本に連れ帰る例が多かった。しかしハーグ条約に加盟してしまうと、勝手に連れ帰ることは認められない。そこに米国は目をつけたわけだ。意図的に、明確に、日本が最も問題視している“拉致”というキーワードを使い、しかも「子供の人権」という絶対的な価値観を持ち出し、「あなたこそ」という論点を突き付けられたら、日本としてもさすがに反論しづらい。たとえそれが論理のすり替えに見えても、だ。

この手法は社内でも使える。たとえば「自分以外の人は仕事をしない」と不満をぶつける人間がいるとする。それに対し「あなたは、もっともらしいことを言うけれど、そのことによって、どれほどほかの人たちに迷惑がかかっているかわかる? あなたこそ問題があるとみんなが言っているよ」と突き付けるのだ。