5. 恫喝する
米国スパイが使う秘策とは

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手ごわい交渉相手は「Good Cop/Bad Cop法」で落とす

米国のとあるスパイ組織の人から聞いた話だが、彼らはターゲットを落とすときに、2つの方法を必ず採るらしい。一つは、脅しや恫喝。論理的、感情的に追い詰めていくのだ。

私の経験でも、北朝鮮やドイツとの交渉において、いきなり怒鳴る人がいた。そのモードに入ると、とにかく全否定してくる。さらに「論理」と「感情」の2つを意識的に使い分けている人は、タフネゴシエーターだなと思わざるをえなかった。

交渉で一番避けなければならないのは膠着すること。とにかく揺さぶらなければいけない。その点でも、脅しや恫喝を仕掛け、論理と感情を使い分けることは有効である。これをより効果的に行うには2人でペアを組み、正反対の立場をとって相手を揺さぶることだ。有名な「良い警官・悪い警官」の手法を用いるわけだ。まず悪い警官役が、論理的に恫喝して追い詰めていく。これで動じる相手もかなりいるだろう。しかし、テコでも動かない場合がある。そこで、良い警官役の出番だ。相手は、恫喝してくる人間とは、もうそれ以上話をしたくないとの思いから、悪い警官役が席を外した瞬間に、良い警官役にペラペラと話をしてしまう。

外交の現場で、こうした手法が採られる例は枚挙にいとまがない。たとえば日本人は、米国の民主党はジャパンバッシングで共和党はそうではないなどと言い、民主党政権と共和党政権では主張や要求が異なると思い込んでいる。しかし彼らは所詮同じ米国のエリート。「良い警官と悪い警官」を使い分けているにすぎない。だから、こちら側が仕掛ける場合も自分ひとりで交渉するのではなく、自分とは正反対の性格を持つ人と同じ目標を追求すべきなのだ。

ちなみに、件のスパイ組織が恫喝し、論理と感情を使い分けてもターゲットが落ちない場合に採るもう一つの方法は「お金をあげる」ことだ。