6. 二股をかける
スイスに学べ

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社内における「永世中立国」になる

究極の悪知恵、究極のしたたかさともいえる生き方は、自分がハブ人脈になることだ。たとえ社内で派閥抗争があっても、どちらにもいい顔ができ、最後には重要なポジションに収まってしまう算段である。

オーストリア、スイスなどといった永世中立国を思い浮かべてみるといい。日本人がこれらの国に対し持つイメージは、なんとなく平和な国で、すごくお人好しの人ばかりが住んでいるといったものだろう。

しかし、なぜ永世中立国でいられるのかといえば、それは「絶対に相手が黙るものを持っている」からにほかならない。たとえばスイスの場合、それは、金融だ。

そうしたポジションを築くためにはまず、利他的に活動する必要がある。「みなさんのお金は全部、私が引き受けます」という形で、あらゆる国々の人々がスイスに金融面でお世話になる状況をつくるわけだ。こうなれば相手の「弱み」を握ったも同然だ。世界保健機関(WHO)をはじめ、スイスに事務局や本部を置いている国際機関が多いのもうなずけるだろう。

社内で自分の立場を優位なものにしようと考える人は、つい一生懸命自己主張してしまう。でも、違うのだ。まず畑は耕さなければならない。「なんでもやりますよ!」と、あらゆる仕事を引き受けて、ほかのみんなが、あなたにお世話になっているという状況をつくるのだ。

やがて周囲は「あの人は嫌な顔一つせず、いつも助けてくれる」と尊敬すらするようになるだろう。すると、贈与の原理と同じであり、みんなが相談してくるようになったり、なにかお返しをしたいとの気持ちが働くようになる。

そうなったらしめたもの。ハブ人脈であるあなたのもとへは、あらゆる情報が集まる。そして弱みを握られているも同然の周囲には、あなたに立ち向かえる人はいない。つまり、あなた自身が、ゲームのルールを決められるようになるわけだ。

原田武夫(はらだ・たけお)
原田武夫国際戦略情報研究所CEO。東京大学法学部在学中に外交官試験に合格、外務省に12年間奉職し、アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を最後に自主退職。在任中は、6カ国協議や日朝協議等に多数出席した。『ジャパン・シフト 仕掛けられたバブルが日本を襲う』など著書多数。
(小澤啓司=構成 時事通信フォト=写真)
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