強力なリーダーシップを発揮して出世するタイプもいれば、親しみやすい性格から人望を得る人もいる。どんなキャラクターを演じれば、出世の早道となるのだろうか。
「日本ではあまり紹介されていませんが最新の心理学では、1人の人間のなかでいろいろなキャラクターが状況に応じて出現することがわかっています。出世したいなら置かれた職場環境、仕事の状況、地位・肩書に応じて臨機応変に適切なキャラクターづくりや、自己演出が必要です」
と話すのは明治大学情報コミュニケーション学部の石川幹人教授。進化心理学が専門である。
わかりやすい話、ベテランのお笑い芸人のように、ツッコミ担当のいじりキャラ、ボケ担当のいじられキャラをケース・バイ・ケースでうまく使い分け、場の雰囲気を和らげたり、笑いをもたらしたりという役割を担うことが組織や集団のなかで存在感を高めることにつながるのだ。
「いじったり、いじられたりする笑いのスキルは、太古の昔から集団のなかで“武器”になった。笑いの中心になれる人は集団のなかで幅を利かせられるのです」(石川教授)
なぜ、優位に立てるといえるのか。通常、集団内では、そこに属する人間同士が協力して、他の集団(他社)に対抗しようとする。その際、チームとしての一体感や結束感が強い集団ほど、他を凌駕するパワーを持つ。誰かが面白い話やジョークを言ったり、滑稽なしぐさをしたりすれば、爆笑であれ、つられ笑いであれ、場はなごみ、一体感が高まる。それは、1万年以上前の狩猟採集の時代に集団の単位で人間が生き残っていくために根づいた感情だという。
この「同調して笑う」ことでチームの共感がぐっと引き上げられると、互いの作業分担が円滑にすすむ。人間関係には、コミュニケーションの食い違いや否定的感情がたびたび発生するものだが、ユーモアはそれを笑いに転化し、一同に肯定的な感情を喚起する効果もある。そうやって集団の協力がうまく働けば、チームのパフォーマンスは自然に上向く。