好感度の高い「いい人」 がキャリアアップできなかったり、バリバリと仕事をこなす「できる人」 が、出世街道で行き詰まるのはなぜか。仕事の成果と出世の関係を、ビジネスマンの行動タイプ別に分析する。

逃げるか、闘うか。それがビジネスの成否を左右する

スポーツのメンタルコーチである私の仕事の一つは、試合時のアスリートの行動をじっと見ることである。10年近い観察の結果、「勝負強いアスリートは、いざというときにリスクを恐れず、相手に立ち向かっていく。勝負の分かれ目では闘争的で強気な行動をとる」という仮説を持つようになった。

ビジネスとスポーツは似通ったところが多い。もし私の仮説が正しければ、成果をあげるビジネスマンは、闘争的で強気な行動をとり、反対に成果をあげていないビジネスマンはリスクを避け、嫌なものから逃げる特徴を持っているはずである。

人間の脳内には、行動をコントロールするたくさんのシステムがあると考えられている。ここでは、欲しいものを手に入れるための「接近システム」と、有害なものから離れるための「回避システム」の2つに着目し、ビジネスマンの行動とからめて考えてみた。

図表1:接近&回避システムと行動タイプの関係
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図表1:接近&回避システムと行動タイプの関係

人間の神経システムの視点にたてば、闘争的な行動は接近システム優位、リスクを避ける行動は回避システム優位と考えられる(注1)。また、ビジネスマンが交渉や説得をする際に、どんな行動をとっているか、gooリサーチとの共同調査でインターネットアンケートを実施(注2)。その結果、接近システム優位には「闘争タイプ」と「社交タイプ」があり、回避システム優位なのが「闘争回避タイプ」、残りが「混合タイプ」と、合計4つにタイプ分けすることができた(図表1)。

闘争タイプは押しが強く、欲しいものは何が何でも手に入れようとする人である。社交タイプは闘争タイプと同じく接近システム優位だが、友好的に近づき、相手とうまくやっていこうとする傾向が強い。闘争回避タイプは人の気持ちを傷つけないように配慮し、会議でも相手の意見に反対しないなど、対決を避けようとする。どのタイプにも偏らない人を混合タイプとした。

例えば、お客様から大きなクレームが入ったとする。闘争タイプと社交タイプは、お客様のところに進んで赴くという点では共通しているが、交渉の姿勢が正反対である。闘争タイプは、クレームが大きくならないよう配慮しつつも、できる限り自社の言い分を押し通し、有利な条件を手に入れようとする。社交タイプは、クレームを機にお客様と友好的な関係を築くことに主眼点をおく。闘争回避タイプは、先方に行くことを躊躇し、他の人間に行かせようとする。行ったら行ったで唯々諾々とお客様の要求に従ってしまう。