納期を守るために部下の尻を容赦なくたたけるか

闘争回避タイプでも、上司の指示どおりに仕事をしている間はあまり問題はない。しかし、自分で提案をしたり、他部門の協力を取り付けてやり遂げる仕事には、交渉ごとがつきものである。交渉の席で相手が嫌がることが言えない闘争回避タイプは、自分に不利な条件を呑んでしまうことが多く、結果、成果をあげることが難しくなるのだ。

社交タイプは成果をあげそうであるが、前述のように、4回以上成果をあげている人に占める割合は最低である。従業員500人以上の企業に勤務する人の行動タイプと役職の関係を見ると(図表3)、社交タイプが頭角を現すのは本部長・事業部長・執行役員クラスからである。部長クラスまでは社交タイプの割合は少ない。おそらく部長クラスまでは仕事の量が多く、社交タイプが得意とする人間関係を構築したり、意見調整をする時間がとれず、成果をあげにくいのではないだろうか。

例えば、あるITシステム会社が大手金融機関からシステム構築の大型案件を受注したとする。この手の仕事は顧客の注文水準が高く、しばしば仕様変更を迫られる。この案件のプロジェクトリーダーが闘争タイプだったら、突然の仕様変更が発生しても、部下や協力会社の人間の尻を情け容赦なくたたき続け、時間内に仕様変更をやり遂げるだろう。社交タイプはこの種の力仕事ができない。クライアントと部下や協力会社の間に挟まれ、うろうろするだけに終わる可能性がある。部長クラスまでの仕事は、限られた時間、限られた予算、限られた人員で、何が何でもやりぬく力仕事が大部分である。

闘争回避タイプは、周りから「いい人だね」と思われつつも、成果をあげられないので出世もしにくい。図表3では、闘争回避タイプは役職のない人に占める割合が圧倒的に高く、主任、係長、課長と昇進の階段を上がるにつれて、その割合がどんどん減ってくる。執行役員クラスになると格段に下がる。これは役職が上がるにつれて、闘争的な行動や、社交的な行動の必要性が大きくなるからであろう。

しかし取締役以上になると、逆に闘争回避タイプの割合が上がっている。これは、おだやかで嫌なこと一つ言わない人が、最後に陽の目を見るケースがあるということだろうか? おそらくそれは見当違いだ。これは、闘争タイプの人が、取締役になるにあたり、闘争回避タイプに行動変容すると考えるべきだろう。「残るためには変わらねばならない」(ヴィスコンティの傑作「山猫」の中のセリフ)のである。