部下が慌てるのを横目で見つつ、やる気を起こさせる。「いじりキャラ」に徹することで、リーダーシップを発揮したのだ。
田中氏は「いじり・いじられ」のスキルの重要性をこう語る。
「いじられ上手は、上司・同僚・取引先など多くの人から話しかけられ、不思議と高い評価を受けます。一方、部下を率いるようになると、誰とでも会話を途切れさせず、場を盛り上げるための『いじり上手』が人気を得るようになるのです。円滑な人間関係こそが出世の早道です」
では、究極の処世術であるゴマすりはどうだろうか。「内側に閉じている」という特徴のある日本型組織のなかで、のしあがっていくためにはゴマすりもしたほうがよいのだろうか。
前出の田中氏によれば、ゴマすりも立派な「いじり・いじられ」の1種。「最近のあなたの活躍はスゴすぎますね」といった“褒めいじり”を実践したり、「私のような未熟者は課長にもっと指導していただかなくては」といったいじられキャラを演じることによって、良好な上下関係を補完・強化するのだ。
「上司の感情に直接訴えるゴマすりで、相手の感情に“貸し”をつくることができます。(業務上で上司に貢献しなくても)上司に『あいつに“借り”がある』という気持ちを少しでも持たせられれば、何かの機会にリターンがやってくる」(石川教授)
「組織では実力ばかりが問われることはありません。組織人は上司に評価されるのが常である以上、出世のためには可愛がられる存在であらねばならないのです」(田中氏)