部下に指示を出したところ、「はい」と元気な返事。ところが部下は指示通りに動かず、仕事は失敗に……。
「社員の『はい』は『聞こえました』という意味で、『やります』ではない。その違いがわからないかぎり、社員を動かすことは難しい」
と指摘するのは、過去最高益を12年間続ける武蔵野の小山昇社長だ。
「やるべき仕事はぐずぐずせずにさっさと片づければいいと考えるのは、仕事がデキるごく一部だけです。頭ではわかっていても、すぐにやらないのが普通の社員です。そうした人間の心理を無視してマネジメントはできない。理屈だけで経営は成り立たないのです」
一方、ドリームインキュベータ特別顧問で慶應義塾大学大学院特任教授を兼務する岩本隆氏は、最近のマネジメントの難しさを次のように語る。
「かつては『俺が上司だ』と権力をふるって部下を従わせるマネジメントが通用した時期もありますが、いまやその手法では人がついてこない。公共政策の専門家であるハーバード大学のディーン・ウイリアムズは、これからは強権的なトップダウン型ではなく、民衆に気を配るタイプのリーダーでなければ国をマネジメントできないと指摘していました。人の心をつかんで引き出すマネジメントが大切なのは、おそらく会社やチームも同じでしょう。部下たちを思い通りに動かしたいなら、彼らの心理に精通する必要があります」
人の心を抜きにしてマネジメントはできないというのが2人の共通意見。では、部下の心をどう動かせばいいのか。2人に実践的なテクニックを紹介してもらった。