5. 家族に手を回す
心を動かす50円のハガキ

「男性社員が社長以上に恐れているのは、奥さんの存在です。『うちは亭主関白だから』という社員もいますが、家庭内では奥さんが天皇陛下。関白より天皇陛下のほうが位は上なので、表向きは偉そうにしていても結局、家では奥さんに頭が上がらないのが実情です。

社員を動かしたければ、この力関係をうまく利用すればいい。頑張らせたい社員がいれば、奥さんの誕生日や結婚記念日に、私からハガキを出します。文面は『いま、ご主人は部長候補で頑張っているので、家庭を顧みず仕事をするかもしれません。奥さん、ご協力をお願いします』。このように書くと、普段は帰りが遅いと不満をいう奥さんも、旦那をけしかけて働かせるようになります。私が頑張れと本人に直接いうより、こっちのほうが効果がある。

新入社員の親御さんに『息子さんは頑張っています』と書くこともあります。親御さんは中小企業に勤めることに基本的に反対ですが、社長から期待をかけられていることを知ると、応援する側に回ってくれます。ハガキを出すときに大切なのは、一枚一枚、表も裏も直筆で書くことです。住所や宛名は印刷したほうが圧倒的に早いですが、手間を惜しんではいけない。社長がわざわざ時間を費やして手書きで書くからこそ、ハガキにありがたみが出ます。

お金に関することを匂わせると、ハガキの効果は倍増します。たとえばなかなかたばこをやめない社員を禁煙に導きたいときは、『たばこをやめたら月々いくらの手当がある。それで奥さんにプレゼントでも買ってあげなさい』と本人宛てにハガキを出します。ハガキは封書と違って本人以外も読めるので、禁煙手当の存在を知った奥さんが旦那に禁煙のプレッシャーをかけるという寸法です。

社員は私のこうしたやり方を知っているので、いまや実際にハガキを出さなくても同じ効果を期待できます。先日、ある社員が出張費42万円分の精算をさぼっていたので、ハガキに『早く精算しなさい』と書いて本人に見せました。早く精算しないと、これをポストに投函するぞといったら、ぐずぐずしていた社員がすぐに精算した。

ハガキは1枚50円。それで社員を動かせるなら、安いものです」(小山)