6. 本音を暴く
個室空間を利用する

「ノキアにマネジャーとして転職することが決まったとき、会社から『最初の半年は、みんなにキミがボスだとは伝えない。アシスタントマネジャーとして紹介しておく』といわれて驚いたことがあります。本来の役職を伏せさせたのは、未来の部下たちと信頼関係を築かせるため。マネジャーと部下の関係になる前に、メンバーと仲良くなって、本音で話せる間柄になれというわけです。

時代劇で暴れん坊将軍や遠山の金さんは身分を隠して町民に溶け込みますが、考え方は同じ。同じ立場で働くことで、メンバーは普段上司にいわない胸のうちまで明かしてくれた。

ときには誘い水として私から会社の悪口をいうこともありました。オフィシャルに会社への不満を尋ねても本音を明かしてくれませんが、同じ立場で先に不満を漏らすと、向こうも警戒心が緩んで本音で話してくれます。ただ、不満分子をあぶりだすことが目的ではありません。不満を探って会社に密告するのは、どう考えても倫理的に問題があります。会社への強い不満を知っても、外に漏らさないことが大切です。

では、なぜわざわざ不満を引き出すのか。目的はガス抜きです。一緒になって会社への悪口をまくしたてていると、途中でメンバーが『でも、いいところもあるんだよね』と、冷静になる瞬間がやってくることがあります。これはガス抜きがうまくいった証拠。しばらくは不平不満をいわずに頑張ってくれるはずです。

目的はガス抜きなので、不満に対して早急に対処する必要もないと思います。本当に改善してほしいことがある部下は、オフィシャルな場できちんと求めてきます。愚痴の類いを真に受けてアクションを起こすと、『そこまでおおごとにするつもりはなかった』と思われて、次からは本音を探ることが難しくなる可能性もあるので注意してください。

部下の本音を探るときには、個室空間を利用するといいでしょう。ノキアの本社があるフィンランドにはサウナ文化があり、日本支社にも社内サウナが設置されていました。ノキアでは仕事が終わった後にサウナに入り、そこでさまざまな情報交換が行われていました。フィンランド人はカラオケも好きで、個室空間のほうが話は弾むようです。日本人とフィンランド人はメンタリティがよく似ています。個室空間で本音を探るというやり方は、日本人の部下にも活用できるはずです」(岩本)