4. 情報操作する
地域大国を押さえられるか
嘘ネタで相手を落とし込もうと情報操作をすることは簡単だ。しかし、すぐにバレてしまい、多くは期待外れの結果に終わる。私は外務省時代にドイツ人外交官から逆のアプローチを耳にした。ある同期入省組が軒並み出世していた。理由はただ一つ。Aさんが、ある部署に異動する話が出たときに、新しい部署の責任者は、Aさんをよく知る同期のBさんに「Aさんはどんな人か」と聞く。するとBさんは「Aはすごくいい奴なんですよ」と答える。それを同期みんなでやった結果、評価が一様に上がったというのだ。
外交において、あるフレームワークを設定し、世論をそちらの方向へ向けるパブリック・ディプロマシーがうまいのは、ヨーロッパや米国だ。その際に重要な役割を果たすのがハブ人脈である。リージョナルパワーと言われる地域大国を押さえておけるかどうかが重要なのだ。たとえばルクセンブルクは、人口約50万人の小さな国。しかしユーロ圏の金融センターとしての地位を確たるものにしている。いわばEUの裏番長だが、それを知らなければ、EUとの金融面での交渉は立ちゆかない。
ビジネスパーソンにとっても有効な人脈とは、ハブ人脈を押さえているかどうかにかかっている。表向きの役職とは関係ない。たとえば、部長を操っている庶務の女性や、出世をせずに同じ部門に長くいて、その分野で強い影響力を持っている人もいる。まさにリージョナルパワー。普段からの観察が不可欠といえよう。
ハブ人脈を特定できたら、しっかりと説明し同意を得ていく。すると自然に、こちら側の意見と同じ立ち位置の意見が相手陣営から出てくる。これが情報操作の理想型である。