社員にやる気がある職場と、そうでない職場は何が違うのか。公認心理師の永藤かおるさんは「トヨタ生産方式で有名な『なぜなぜ分析』は、『モノ』の不具合の原因を突き止める場面では有効だ。ただ、この発想を『ヒト』の問題にそのまま当てはめるのは、逆効果になりかねない」という――。

※本稿は、永藤かおる『「アドラー」だから自分で動ける部下が育つ 上司の教え方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

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「弱点」と「強み」は表裏一体

相手を肯定的に見るための意識改革に役に立つのが、アドラー心理学でも用いられる「リフレーミング」です。

「リフレーミング」とは、物事の見方や枠組み(フレーム)を意識的に変えることで、同じ特徴や行動を別の意味づけで捉え直す手法です。

たとえば、「飽きっぽい」とか「忍耐力がない」という性質は欠点に見えますが、見方を変えると「好奇心が旺盛」「切り替えが早い」という長所に捉え直せます。細かい部分の詰めが足りないことを「ルーズ」だと捉えると弱点ですが、「おおらか」「こだわりがない」というふうに捉え直すこともできます。

つまり、短所や弱点だと思っていたことは、リフレーミングで見方を変えれば長所や強みになるのです。

それだけで相手への印象がネガティブからポジティブに変わり、肯定的に捉えられるようになります。

これが人を教えるのに欠かせない「勇気づけ」スキルの一つです。

ただ、私たちはあまりリフレーミングに慣れていません。ですから、意識的に練習する必要があります。

図表1の「リフレーミング辞典」を参考にしたり、スマホアプリの「ネガポ辞典」やChatGPTをゲーム感覚で使ってみるのもいいでしょう。

粗探しは「教える側」が疲弊するだけ

相手を肯定的に見られるようになると、良いところが自然と目に入り、ダメなところはあまり気にならなくなります。

相手の粗探しばかりしながら指導するのと、良いところに目を向けて指導するのとでは、「教える側」のイライラやストレスがまるで違うでしょう。

だからといって、相手のことを手放しでほめましょうか、とか好きになってくださいと言いたいわけではありません。

世の中にはいろいろな人がいて、相性もあります。ですから、自分とはどうしても合わないと感じたり、嫌いという感情しか湧いてこないとしても、それは仕方がないことです。

大事なのは、「好き嫌い」の感情をいったん脇において、冷静さをもって「相手の良いところに目を向けること」です。

極端なことを言えば、「苦手だけど、こういう良いところはある」という目で相手のことを見ることができれば十分です。それだけで相手への言動は自然と変わります。

そうすると、教える相手との間に「好き嫌いを超えた関係性」が築けるので、結果としてずっと楽に教えられるようになるのです。

では、具体的に何をすれば「勇気づけ」ができるのでしょうか。