相手に気づきを与える「問いかけ」とは

これは、単なる甘やかしでも、根拠のないポジティブシンキングでもありません。

本人に仕事への不安がある場合は特に、「できていないところ」ばかりに意識が向いて自信を失いやすいものです。

ですが、「できている部分は?」と問われるだけで、「実はここまでできている」「この部分は進んでいる」と気づくことができます。

そうして、「できている側面」に目が向いた瞬間、ふっと前向きになり、「次に何をすればいいか」「一歩進めるとしたらどこか?」という発想が自然と生まれやすくなるものです。

そこまでくれば、「教える側」があれこれアドバイスをしなくても、本人が自分の強みを活かし「次の行動」を選ぶことができるようになります。

これこそが、「教える側」ができる「勇気づけ」であり、「教える側」の負担も少なく、お互いの関係性も良くなる教え方なのです。

相手の弱点や「できていない点」に焦点を当てる「プロブレムフォーカス」よりも、「できている点」「これからできる可能性」に焦点を当てる「ソリューションフォーカス」のほうが、相手の強みを引き出し、活かしながら教えるうえでは圧倒的に適しています。

トヨタ式「なぜなぜ分析」の落とし穴

ただし、どちらが優れている、というわけではありません。

「プロブレムフォーカス」は、「なぜこうなったのか」を掘り下げていくことで真の原因(一次原因)を突き止めていきます。また、問題の構造を明確にすることで、改善につなげることができます。

機械トラブルや製造工程の問題など、「モノ」の不具合の原因を突き止める場面では非常に有効なアプローチ法です。

トヨタ生産方式で有名な「なぜなぜ分析」は、その典型です。このような分析の積み重ねによって品質の向上が図られたことが、日本の製造業が世界的に高い評価を受けてきた理由の一つとも言われています。

ただ、この発想を「ヒト」の問題にそのまま当てはめると、「なぜできないのか」「なぜ理解できないのか」と繰り返し問うことになってしまいます。

すると、マイナス面ばかりがフォーカスされ、最終的には「やる気がない」か「能力がない」という結論に向かいがちです。「なぜなぜ」と言われた側は人格を否定されたように感じかねません。

その結果、本人は自信を失い、成長意欲が奪われてしまいます。