税金・社会保険料の負担が年々重くなっている。元国税専門官でマネーライターの小林義崇さんは「給与の額面から天引きされる最大の項目は社会保険料だ。所得控除となる、ふるさと納税、iDeCo、医療費控除などをいくら積み上げても社会保険料はほとんど変わらないが、減らす対策をすることはできる」という――。
給与明細に対する居住税と所得税のイメージ
写真=iStock.com/Yusuke Ide
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手取りを削る「最大の敵」は社会保険料

毎月の給料日、振り込まれた金額を見て「思っていたより少ないな」と感じたことはありませんか。給与明細の「控除」の欄には、見慣れない項目がいくつも並んでいます。けれども、給料から何にいくら引かれているのかを“正確”に説明できる人は、実はとても少ないのです。

そこで、今回、ひとつのモデルケースで再確認してみましょう。

年収500万円・独身・40歳未満(介護保険料の負担はなし)の会社員の方が、健康保険は協会けんぽに加入していて、収入は給与だけ、という前提です。この方が1年間で給与から引かれるおおよその金額を、分けて見てみます。

● 所得税:約12万円
● 住民税:約24万円
● 社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険):約72万円

合計するとおよそ108万円。手取りは額面の8割を切ってしまいます。

ここで注目したいのが、内訳のバランスです。多くの方は「税金でたくさん持っていかれている」と感じていますが、税金(所得・住民)は約36万円。一方で社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険)は、その2倍以上にあたる約72万円です。

社会保険料のほうが多いと知ってはいても、この比率までしっかり認識しているでしょうか。さらに私が強調したいのは、この社会保険料は「個人負担分」に過ぎず、ほぼ同額を勤務先の会社が負担しているという事実です。つまり、手取りを削っている「最大の敵」は社会保険料であり、その額は想像以上に多いのです。

なお、ここで挙げた金額は、令和7年(2025年)分の制度をもとにした概算です。所得税は2025年の基礎控除の引き上げによって、以前より少し軽くなりました。また、社会保険料はお住まいの都道府県の健康保険料率や、賞与と月給の配分などによって多少前後します。しかし、「社会保険料が群を抜いて大きい」という構図そのものは、どなたの給与明細でも変わりません。ここが大事なポイントです。

社会会保険料は約58万→約83万円へ

ここで、社会保険料の負担率の変遷を見てみましょう。

第一ライフ資産運用経済研究所の政策調査部 フェローの谷口智明氏によれば、2000~2025年までの25年間で名目の給与(総務省・家計調査「2人以上の世帯のうち勤労者世帯」の各年の月平均額を年換算、以下同)はほとんど伸びなかったと同所HPで発表しています。

2000年の約633万円から約713万円へと増加したものの、年平均でわずか0.5%増。いわゆる「失われた30年」と言われるゆえんです。

では、天引き額はどうだったのか。所得税・住民税は約48万円から約62万円(2000年比で約1.3倍、約14万円増)に上昇しました。年平均にして1%増です。

これに対して、社会保険料は約58万円からなんと約83万円(2000年比で約1.4倍、約25万円増)となり、年平均1.5%増。収入の伸びがとどまる中、直接税を大きく上回る負担となりました。

なお、2000年度から2025年度にかけて、日本の社会保障給付費(年金・医療・介護等)は、78.4兆円から140.7兆円に膨張しています。それを賄うための社会保険料(被保険者負担)は、29.9兆円から43.5兆円と、約1.5倍に増加しました。