※本稿は、佐々木淳『科学的根拠+αで成果を出す 戦略的勉強法』(あさ出版)の一部を再編集したものです。
「散らかったもの」を見ると集中力↓
体を動かすと集中力が上がることが、研究で分かっています。ただ、「運動は正直、面倒」と感じる人もいると思います。そんな人におすすめしたいのが、「短時間の掃除」です。掃除なら、運動ほどのハードルが高くなく、しかも環境を整えながら脳を「勉強モード」に切り替えることができます。
UCLAの研究では、生活空間が散らかっている人ほど、朝と夜で変化するはずのコルチゾールのリズムが小さくなりやすいと報告されています。つまり、1日中「頭がシャキッとしない状態」が続いてしまうのです。
また、カーネギーメロン大学の研究に、教室の環境を意図的に変えた実験があります。壁面装飾が多く、視覚情報にあふれた教室は、一般的な普通の教室に比べて注意がそれやすく、学習の伸びが小さくなる傾向が見られました。
視界に入る多くの情報が、集中を妨げていたのです。
誘惑を目にすると我慢が難しくなるように、散らかった物を見続けることで集中力は削られます。だからこそ、勉強や作業を始める前に視界をクリアにすることには意味があります。
「掃除」がウォーミングアップになる
掃除の効果は、環境を整えることだけではありません。掃除は、掃除機をかける、物を移動させる、机を拭くなど軽い身体活動を伴います。これは、軽度の有酸素運動にあたります。軽い有酸素運動の直後には、注意力や段取り力が一時的に高まりやすいことが複数の研究で示されています。
野球選手が試合前にウォーミングアップを行うように、勉強前に短時間の掃除を行うことは、脳にとっての準備運動になります。掃除は、脳の司令塔である前頭前野を目覚めさせる「ウォーミングアップ」なのです。
ミネソタ大学の研究では、整った環境に身を置くと脳が無意識に「規律」を意識するため、自制心が働きやすくなると報告されています。実際、散らかった部屋にいる人よりも、欲求を抑えた健康的な食事を選んだり、利他的な行動をとったりする傾向が見られました。
これは勉強や作業にも当てはまります。集中力は、個人の意志の強さだけでなく、環境によって決まります。徹底的に環境を整理し、物の定位置を決める自衛隊のやり方は、「モノを探す」「気が散る」といった脳の無駄な負担をなくして、学習だけに集中させる、合理的なシステムなのです。

