グローバル化、業界再編、リストラ……、企業を取り巻く環境は激変している。ライバル会社はどうなっているか、徹底レポートする。
人事制度は保守的な化学各社
医薬品各社の従業員平均給与は、全体として上向きでの推移だ。リーマンショック以前の水準に戻り切っていない、自動車などの製造各社や素材関連企業とは対照的である。
売上高比率で10~20%に及ぶ多額の研究開発費を投じて開発してきた新薬の販売を中心に、高い営業利益率を実現してきたことが“高給”を支えているという構図だ。ただし、医薬品各社がひとつの転換点を迎えているのも事実。武田薬品工業は英国医薬品大手のグラクソ・スミスクラインで要職にあったクリストフ・ウェバー氏を社長として招聘。アステラス製薬は14年度に総勢300人の早期退職者を募集。大病院などの医師に対するMR(医薬情報担当者)による接待も規制され、営業スタイルの変化も余儀なくされる。
欧米の製薬大手に規模で劣る国内各社は、新薬開発やグローバル化を目的に相次いで海外医薬品会社を買収してきたが、十分な成果をあげているとは言い難い状況にあることも、見逃せない。たとえば、武田薬品工業が2007年度以降に企業買収や設備投資に投じたキャッシュは2兆円を超す(子会社や設備の売却で得た現金との差額)。第一三共は7000億円強、エーザイと大塚HDは6000億円規模だ。そのために、武田薬品工業はおよそ1兆円、第一三共は2500億円ほど手持ちキャッシュを減らしているが、同期間の累計純利益は、投じたキャッシュの合計額を大きく下回る。売上高にしても微増での推移だ。新興国での本格的な販売などを含め、まさに、グローバルリーダーの人材育成が、医薬品各社に求められている。
トイレタリーや化粧品各社も海外展開を急いでおり、グローバル人材が求められているのは医薬品各社と共通。花王と資生堂では、入社25年前後で部長や支社長に昇格するのがパターンだが、取締役の年齢構成は、花王のほうがやや高いようだ。花王は「終身雇用」など“ジャパニーズ・スタンダード”ともいうべき、人事制度の構築も強調している。
米国発のシェール革命の影響を最も受ける業界のひとつが化学だ。すでに基礎原料のエチレン国内製造設備の集約化に走り出しているように、不採算事業の縮小・撤廃が進められることは確実で、雇用面での影響が懸念される。
化学各社の多くは、保守的な社風や人事制度もあって、部長や室長などへの昇進に時間がかかるのが一般的だが、変化を余儀なくされる可能性は高いはずだ。