グローバル化、業界再編、リストラ……、企業を取り巻く環境は激変している。ライバル会社はどうなっているか、徹底レポートする。
日本航空は「反転攻勢」へ出るか
航空業界は、大手2社が市場を押さえてきた構図に変化の兆しが見えつつある。全日空と日本航空の争いにスカイマークが加わり、さらにLCC(格安航空会社)が次々と進出する。熾烈な競争の中、格安の波が押し寄せている。この「価格破壊」と、グローバル化が改革に拍車をかける。
全日空は2014年4月に入社する客室乗務員から、契約社員としての採用を正社員雇用へと切り替える。国内線に加え、国際線の要員も増やし、体制を強化することでグローバル化に備える。一方で、高コスト体質にもメスを入れる。世界の大手航空会社の中でユニットコスト(1座席を1キロメートル運ぶのにかかる費用)が依然として高い。東京・汐留のグループ本社フロアを縮小し、賃料などを含め、経費の削減を目指す。
日本航空は、破綻処理の一環として大幅なリストラを行った。人件費を中心にコスト管理が行き届き、業績の急激な回復を進める。しかし、13年10月、羽田空港の国際線発着枠をめぐる争いでは、国交省の判断で全日空は11枠、日本航空は5枠となった。羽田の国際線は、1便で年間10億円前後の利益になると目される。
再スタートの出鼻をくじかれた形の日本航空だが、コスト管理を一段と徹底させ、「反転攻勢」を進める可能性が高い。迎え撃つ全日空やスカイマークなどは、更なるコスト改革などが必要になる。
海運業界は、商船三井、日本郵船、川崎汽船の大手3社を中心に、00年代半ばの「海運バブル」では高業績を記録した。その後、08年のリーマンショック以降、商船三井、日本郵船などが業績赤字に陥る。バブル期に船を続々と竣工させ、その供給に需要が追いついていかない。その後遺症は、今も残る。商船三井は2期連続の業績赤字になり、リストラを進めざるをえなくなった。今年は、その「V字回復」を狙う。しかし、業界の構造的な不況が当分は続くと思われるだけに、航空業界と同じく、各社のコスト面などの改革は急務といえる。
陸運業界はネット通販が浸透し、宅配便などの貨物量は増えている。特に、シェア1位のヤマト運輸と2位の佐川急便がその恩恵を受ける。
航空、海運、陸運業界はこれまでのビジネスモデルやコストのあり方を見直し、特に需要と供給のバランスや態勢を立て直すことが求められる。その一環として、人件費の厳格な管理が一層必要となる。賃金体系のあり方を再検討することが考えられる。