グローバル化、業界再編、リストラ……、企業を取り巻く環境は激変している。ライバル会社はどうなっているか、徹底レポートする。
買収後の混乱続く日本板硝子
石油業界は、精製・販売を手がける元売りを中心に、安定経営が長く続いたこともあり、手堅い人事が今も残っている。
JXHD、出光興産、コスモ石油の場合、課長職が見えてくるのは40代半ば。出世組は入社25年で支店長や製油所所長、部長職に就き、30年在籍で執行役や取締役に昇進する、というのがパターンのようだ。
開示されている従業員の平均給与はダウン傾向だが、給与水準が高かった団塊の世代の退職が続いた影響もあるようで、依然として、給与水準は他産業に比べて恵まれているといっていいだろう。
ただし、エコカーの普及や産業の空洞化などの影響で、国内における石油の需要は減少し続けており、精製設備の統廃合といったコストカットや合従連衡は不可避の情勢で、雇用への影響もありうる。つい最近も、東燃ゼネラル石油が三井石油の買収に着手した。
また、米国発のシェール革命で世界のエネルギー事情は一変する可能性もあり、各社とも成長事業の育成が不可欠。出光興産やJXHDの海外販売比率は15%程度にとどまっているように、グローバル化の推進も鍵を握る。成長事業の開拓や海外展開など、新しい人材の出番もありそうだ。
旭硝子、日本板硝子、日本電気硝子のガラス各社は、海外売上比率が6割台から7割台とすでにグローバル企業。旭硝子はグローバルマネジメント人材の採用を進めており、外国人留学生とも昇進を競うことになる。日本電気硝子は早ければ社歴20年で部長に昇進、25年で執行役といったところだ。
売上高がおよそ2倍の英ピルキントンの買収を手がけた日本板硝子は、買収効果どころか、外国人社長の突然の辞任などで混乱。経営の低迷から役員報酬カット、グループ全体で3500人の人員削減を図っており、M&A(合併・買収)を実施した後の舵取りの巧拙が、経営の屋台骨や雇用に直結する現実をみせつけている。
業界トップの太平洋セメントですら過去に500人ほどの早期退職者を募集したように、想定を大きく下回る需要減が続いたセメント業界は、東日本大震災の復興需要や都市部における民間再開発工事の増加などで経営環境が好転。施設の建設で需要増が見込める東京オリンピックも控えており、現在の好環境のうちに新規事業の育成やグローバル化を実現したいところ。「変革意欲」の持ち主など、求められる人材の条件も変わってこよう。