2005年の合併以降、業績が右肩上がりのアステラス製薬。日本企業同士の合併でありながら大胆なグローバル化に挑む同社が採り入れたのは、異文化を統合するための、公平で明快な人事制度だった。
両社の“遺伝子”が近いことが最大の決め手
市場での生き残りを懸けた企業の合併が注目されている。だが、サントリーとキリン、高島屋とエイチ・ツー・オー リテイリングの破談劇は“生みの苦しみ”がいかに大変であるかを浮き彫りにした。
製薬業界でも、1990年代後半に欧米を中心にM&Aが活発化し、その波は2000年以降、日本にも飛び火。外資を巻き込んだ再編劇が相次ぐ一方、国内企業同士の合併も急速に進んだ。その中でもアナリストたちに合併の成功例と見なされているのが、山之内製薬と藤沢薬品の合併で誕生したアステラス製薬である。
営業利益を見ても、05年4月の統合時は1922億円だったが着実に業績を伸ばし、08年3月期は2759億円に達した。売上高も右肩上がりで推移している。もちろん業績は成功の一つの指標にすぎない。合併の最大の課題は「人の融合」にある。
同社の中島与志明執行役員人事部長は、成功の要因について「両社の社員の遺伝子レベルが似ていた」と指摘する。
「経営トップと中堅社員の距離が非常に近く、会社の規模も同じであり、営業スタイルが粘着質という点でも似ていました。旧山之内は開業医を相手に数字にこだわる粘着質な部分があり、旧藤沢は顧客との人間関係づくりに非常に執着する。加えて、研究・開発職の社員は学会でも結構顔を合わせる機会があるなど、技術に関する共通言語を持っていたことがうまくいった要因ではないかと考えています」
働き方や仕事の進め方が似ている、つまり相性が合うことが合併前の最大の決め手であるということである。だが、それでも昨日のライバルが一緒に机を並べることにかわりはない。