“たすきがけ人事”を否定した統合7原則

統合プロセスで最も重要だったのは、トップマネジメントが公平な人事を貫いたことだと中島部長は強調する。対等合併とはいっても、資本力や事業規模に差があれば、強者は奢りにまかせ、弱者は必死の思いで椅子の奪い合いが発生するのが常だ。同社はこれを廃するために、統合準備中にトップ自ら公正中立な人事を宣言。旧社の経営トップ2人ずつの計4人(トップ4)が新ポストの候補者全員と面談し、適材適所の人事配置を断行した。

「統合1年前の正式発表後にビジネス単位の分科会を設置し、両社の実務家による準備作業を進めてきました。新社の組織構造が固まった夏過ぎからのポストの人選では、トップ4が各分科会のリーダーの情報を参考にしながら候補者に直接インタビューし、ポストにふさわしい人を決めました。その間は外部の雑音を一切シャットダウンし、4人だけで公正に人選を行いました」(中島部長)

いわゆる“たすきがけ人事”ではない。統合発表後に社内に対して「統合7原則」を発表し、そのうちの一つである「人事は能力に基づき、公正にして適材適所に徹すること」を実践した。また統合直前には、旧社のトップ自ら現場に出向いて統合の必要性を訴えるなど、丁寧なフォローを行った。

「旧山之内のトップが旧藤沢の事業所に、旧藤沢のトップが旧山之内の事業所に出向いて統合の理念を訴えました。今振り返ると、トップのコミュニケーション量の多さが、統合で不利益を被るであろう人たちの納得は得られないまでも、理解できる水準に持っていけたのではと考えています」(中島部長)

しかし、適材適所とはいえ、2つの会社が1つになる以上、余剰となる部署やポストから外れる人も当然発生する。通常は数年間のタイムラグを置いてリストラクチャリングを行うが、長く温存させると社員の間に疑心暗鬼や離反を生み出すという副作用もある。

同社は先の統合7原則に「今ある人、今ある仕事、今ある組織にこだわらず、新社の戦略をもとに『あるべき機能』『あるべき組織』を追求すること」を掲げ、スピーディーに断行した。

外資との競争が激しくなる中で早期の競争力確保が必要という事情もあっただろう。当然痛みも伴う。統合直前の05年1月に1000人の早期退職募集を実施しているが、「家庭の事情で大阪から東京に行けない人など、非常に辛い思いをした人もいた」(中島部長)という。その一方で「トップが統合の意義やその先にある夢を語り続けたこともあり、統合直前の社員意識調査では95%の社員が統合の意義に賛同し、会社の方向性に対する共感度が高かった」(中島部長)という成果も生んだ。