誰の目にも明快な人事制度を構築し、社員の不安を解消

しかし昇格にしても降格にしても納得が得られる仕組みがあってこそ機能する。同社は次の経営幹部を担うサクセッション・プラン「後継者育成計画」を持つ。これは現在の経営幹部の数年先の後継者をリストアップし、育成していく仕組みである。人事異動の時期に合わせて、毎年1回トップを含む「人事会議」を開催し、サクセッション・プランを全部検証している。

「欧州の人事部長や米州の人事部長も呼んで、欧州域内や米州域内の部長、本部長クラスの幹部のサクセッション・プランの見直しを進めています。課長級については人事部と部門長で同じことを実施しています」(中島部長)。リストアップに当たっては、できるだけ恣意的判断を持ち込まないことが重要だ。08年には外部アセスメントを導入し、部長級全員の評価を実施している。

「目的は2つです。一つは社内だけの評価でなく、外部の中立的な見方も参考にすること。もう一つは、外部の機関は同じクラスの他社の人材を多く見ているので、当社の部長クラスが他のグローバル企業と比較し、どのレベルにあるかを知りたかったのです」(中島部長)

同様に執行役員についても、世界的に有名なエグゼクティブサーチ会社のチェックを受けるなど、客観的評価を行っている。もちろん実際の人事はこうした情報だけではなく、社内で実施している上司評価のツールである「360度評価」の情報を加味しながら総合的に判断している。

一般社員から経営幹部に至るまで、育成と配置を重視する背景には、2つの理由がある。

「合併直後の意識調査では、他社から来た新しい上司は、自分のキャリアに関する希望を理解してくれるだろうかという不安を抱える社員もいました。もう一つは、人事において本当に最適な配置をしてくれるのかという疑問です。そのためには、選出のためのちゃんとした仕組みをつくり上げ、説明責任を果たせる人事を行っていく姿勢を見せることも重要だと考えています」(中島部長)