水谷尚人(NPO法人湘南ベルマーレスポーツクラブ理事長)
チームが負けても、会社の資金繰りが苦しくても、明るく前向きに取り組めば、必ず状況は好転していく。水谷尚人はそう、信じている。太陽のごとき笑顔がはじける。
「僕の一番好きな言葉は高杉晋作の辞世の句、『おもしろきことなき世をおもしろく』です。つらくても、エンジョイ。明るく、笑って、生きようよ、ということです」
5月某日。NPO法人湘南ベルマーレスポーツクラブが発足させた7人制ラグビーの『湘南ベルマーレラグビーセブンズ』(通称Bell7)のトライアウトが、神奈川県藤沢市のフットサル場で開かれた。
30数人の挑戦者が集まり、水谷は「これだけ集まってくれて、すごくうれしいですね」と笑顔をふりまいた。
「ユニークで愉快な、個性的なチームをつくりたい。ラグビーのノーサイド精神っていいじゃないですか。新しいスポーツの価値をつくっていきたいのです」
湘南ベルマーレは株式会社がJ2のプロチームを運営し、このNPO法人がビーチバレーやトライアスロン、フットサルなどのチームを持つ。いわゆる地域密着の総合型スポーツクラブだ。47歳の水谷は、そこの理事長を務める。
「苦労続きですけど、楽しいですよ。恵まれた環境じゃないのに、みんな一生懸命に明るくやっている。地域とのコミュニケーションを密にし、スポーツを通じて、みんなが幸せになったらいいな、笑いが増えたらいいな、と思うのです」
東京都出身。小学校3年からサッカーを始め、早稲田大学でもサッカー部で活躍した。卒業後、リクルートに入社し、Jリーグが発足した1993年、日本サッカー協会に転職した。96年から6年間、2002年日韓ワールドカップ日本組織委員会(JAWOC)に出向した。
02年W杯後、「株式会社スポーツエンターテイメントアソシエイツ」という会社の立ち上げに参画し、その後、スポーツマーケティングを支援する「株式会社SEA Global」を立ち上げた。
「ずっと心掛けているのが、“みんなが楽しく”ということです。会社も、クラブも、財政的には厳しいですよ。でも、なんか、みんな笑っている。明るく生きる、やっぱり、それが大事なんです」
エキサイティングかつ、チャレンジの連続である。妻との間に11歳と6歳の娘を持つ。ふたりとも湘南ベルマーレのチアリーディングスクールにも通っている。
「ふたりともかわいいですよ。もう奇跡的。ははは」
なんだろう、この心地よさは。水谷の笑顔に接すると、こちらまで幸せな気分になってくるのである。