鈴木大地(日本水泳連盟会長)
あの感動的な1988年ソウル五輪の金メダル獲得から四半世紀が経った。47歳の若き日本水泳連盟会長は忙しい。でも、さわやかな笑顔は変わらない。
先の日本競泳選手権。競技の合間にはスポンサー企業の役員や連盟関係者との応対に追われた。「時間がもっとほしい」と言いながらも、いつも何かを学ぼうとする鈴木大地会長の周りの空気には熱いものがある。
「(水連の)会長になったので、当然、守備範囲が広がるわけです。いろんなことに対して、配慮する必要があります。選手を強化していくためには、スポンサーとのふだんのお付き合いもすごく大事なのです」
日本水連はざっと90年の歴史を持つ。輝かしい伝統がある。昨年、そんな競技団体のトップに立った鈴木会長に「心掛けているものは?」と聞けば、「バランス」との答えが瞬時に返ってきた。
「これまで大事に大事にしてきた部分もありますし、半面、世の中が激しく動いていますので改革しないといけない部分もあります。伝統と改革。いいところは残して、改めるべきところは改めるということでしょうか」
鈴木会長は現役時代から、ずっとそうだった。考え、工夫し、行動する。代名詞となった「バサロ泳法」に象徴されるように、既成概念への挑戦をいとわない。
モットーが、母校の順天堂大学の掲げる「不断前進」である。
「常に現状に満足しない。たゆまぬ前身と改革ということです。水連が、スポーツ界をリードするくらいの気持ちで進んでいこうと思っています」
千葉県習志野市出身。84年ロサンゼルス五輪、88年ソウル五輪と出場し、ソウル五輪の100m背泳ぎで日本競泳陣に16年ぶりに金メダルをもたらした。現役引退後、米国留学などを経て、母校の順天堂大学で教鞭をとる傍ら、水泳部監督となった。
水泳にかける思いは強い。目標が、「水泳を真の世界スポーツにすること」という。
「サッカーや陸上に比べたら、水泳はまだまだ、です。地域としてまだ未発展のところがあるし、環境が整ってないところもある。指導者のレベルもそれなりに上げて、世界のどこでも誰でも、同じように水泳の競技環境を享受できるようにしたいのです」
水泳の普及・発展のため、鈴木会長は多忙なスケジュールの合間を見つけ、陸上やラグビーなど他競技のイベントものぞく。関係者に会って、話を聞く。勉強のため、である。
さて会長として、日本の水泳界を何色に染めたいのか? そう問えば、ニンマリして、短い言葉を返した。
「金色に決まっています」