萩野公介(ロンドン五輪水泳400m個人メドレー銅メダル)
北島康介のあとを継ぐ、日本競泳界のエース的存在である。先の日本水泳選手権では6種目に挑戦し、序盤から飛ばす積極的な泳ぎで、4種目を制した。
伸び盛りの19歳。うち5種目で自己ベストを更新し、2つは日本新記録だった。萩野は充実した笑顔を浮かべた。
「去年より、満足できる4日間でした。悔しい部分も、やり遂げた部分もあります。夏にうまくつながったという意味で、とりあえず“終わったな”と思っています」
2年前、高校3年生で臨んだロンドン五輪の400m個人メドレーで銅メダルを獲得し、一躍、脚光をあびた。昨年の日本選手権では史上初の5冠を達成。昨夏の世界選手権では200m個人メドレーで銀メダルを獲得しながら、同400mではライバルの瀬戸大也に優勝を奪われ、まさかの5位に沈んだ。
その後、平井伯昌コーチの指導のもと、鍛練をつんできた。「水泳にまじめに取り組む性格。やればやるほど良さが見えてくる。まだ直せるところはたくさんあるので、記録を伸ばせる」とは同コーチの評。
明るいキャラで、新聞記者にも冗談をとばす。大会初日の400m個人メドレーの予選のあと、ホテルのトイレで左ひじを強打したハプニングも、事細かに状況を説明して、記者を笑わせてくれた。
いつもポジティブ。「大会の収穫は?」と聞かれると、真顔でこう、答えた。「初日の400m個人メドレーの最後の自由形で粘れなかったのが一番の収穫かな」と。
「課題が一番の収穫だと思います。だって、課題が見つからなかったら、次は何の練習をしたらいいのかわからないですから。課題が見つかって、それを解決していけば必然とタイムも上がるんです。(課題は)うれしい以外の何物でもありません」
今年の目標は、「個人メドレーで絶対的な力をつけること」という。年末年始、3月と、初めて挑戦した高地トレーニングの効果もでて、こうすれば記録を短縮できるという道筋をみつけることができたようだ。
栃木県小山市出身。赤ちゃんの頃から水に親しみ、小学校低学年から学童新記録を連発してきた。中学、高校でも、各年代の新記録を樹立。昨年春、栃木・作新学院高校から東洋大に進学した。
かつての王者、マイケル・フェルプス選手のような世界で戦える「マルチスイマー」を目指している。心肺機能の高さ、水をつかむテクニックは折り紙つきである。
「もうひとつ歯車が合えば、一気にポンと記録が出る感じがしています」
ことしは8月にパンパシフィック選手権(オーストラリア)、9月にはアジア大会(韓国)が開かれる。経験を重ねるにつれ、自信も膨らんできている。